慶大理工数学'07[A1]検討

[A1](解答はこちら) (1)は単なる積分の計算問題で、2次関数の最大最小をからめて、空所補充式の問題の採点がやりやすいように極限を求めさせる問題です。受験生にとってはおもしろくもない計算なのですが、実用的な意味があるので、我慢して計算してみて欲しい問題です。の最小の方では、bc2変数関数の最小問題になりますが、bcの各々について2次関数の形になるので、bcそれぞれについて平方完成を行います。という形が出てくるので、それぞれのカッコ内が0のときに最小になる、とすれば解決します。最近、少々珍しいですが、以前は頻出技巧でした。

ところで、この問題が何をしたいのか、という背景を書いておきます。
微生物の水質汚濁への耐性を調べるために、毒物の濃度と微生物の生き残り個数のデータをとることにします。培養した微生物を
10個の容器に分けて入れ、それぞれ、毒物濃度を1ppm2ppm3ppmと上げていき、1ppmのときの1立方ミリ中の微生物個数を数えます。52個だったり、47個だったり、53個だったりするでしょう。2ppmのときには、32個だったり、37個だったり、29個だったりするでしょう。このとき、こうして得られたデータをどう整理して、微生物の水質汚濁耐性を調べたらよいでしょうか。
このとき、全体の平均値や、
2量の関係を直線で表すことを考えます。毒物濃度と生き残り個数の関係が直線にならなくても、毒物濃度の逆数とか対数を考えると、生き残り個数の間に直線的な関係が見られるかも知れません。
それにしてもバラバラのデータからどう直線の式を作ればよいでしょうか。
2xyのデータが、,・・・,のようにn個与えられているとします。xyの関係が仮にになるとして、各データごとに、直線からのズレを調べます。このとき、単なるズレ: ()を加え合わせてしまうと、うまくabを求めることができません。プラスにズレるものとマイナスにズレるものとで相殺してしまって、ズレを加え合わせると、ズレの総和がほぼゼロになってしまうからです。
そこで、ズレの
2乗: ()を考えます。2乗であれば必ず0以上になるので、各データの直線からズレは足していけば累積します。ズレの2乗の総和:
 ・・・@
が最小になるようなabを決めれば、測定データをよく表す直線の方程式: が得られます。そうは言っても、@は複雑な式になるのではないか、という気がするかも知れません(フーリエ級数をネタにした同様な問題が'94年九大理系前期[4]にあるのですが、この問題を演習課題に出したら、先生、この問題やめようよ、と、言ってきた生徒がいました。大した計算じゃないよ、と、私に説得された彼は、慶大理工に進学しました)が、面倒でも展開して足し直してみると、
ここで、とおくと、

  
と平方完成できるので、を満たすようにabを決めればよいことになります。この手法を最小自乗法と言います。
最小自乗法を関数
に応用するとどうなるでしょうか?区間において、曲線を最もよく近似する直線の式: を求めたいとします。区間内の各xにおける2乗の総和を求めて足し合わせれば良いのですが、ここで、
を考えよう、というのがこの問題です。(1)後半の、
というのは、において、曲線に最も近い直線:を求めよう、と、言っているのです。直線はhを用いて、
と表せますが、採点が面倒(と言っては出題者に失礼ですね。受験生の多少の計算ミスに目をつぶるため?)なので、の極限を答えさせるようにしたのでしょう。
では、前半の、
は、何をしたいのかと言うと、の最小値を与えるaが、におけるの平均値だと言っているのです。実際、
となるので、区間の幅で割ると、の最小値を与えるaの値、
 (アの答)
になります。

(2)は、頭脳明晰な受験生諸氏は、()だけあれば良くて、()は無意味だと思われるかも知れません。()の答、 で、とすれば、()の答54が出てきます。試験場でも、最初から一般的な正角形の場合で考えて、を代入して()を答えた受験生も多いと思います。
ここでは、慶応の先生は、問題解決の
1手法を提示したいのです。最初から一般的なnについて考察を進めようとすると困難なとき、具体的なある一つのnの値について感じをつかんでから、一般的な問題を考えようと、言っているのです。
地球温暖化の問題を一般的に考えようとすると非常に難しい問題です。しかし、まず、はじめに、皆さん一人一人が、自分の身近なところから、できるところから、エアコンの温度設定を
1度高くしよう、とか、なるべく扇風機にしよう、とか、それなら電器量販店でもらったうちわにしよう、というように発想していこうと、言っているのです。これは、極端な例かも知れませんが、具体的なわかり易い問題から考えていこう、というのは、入試問題一般についても言えることです。特に、慶応理工では、(1)で小学生でもできる問題を考え、(2)(1)の発想を応用し、(3)(1)から(2)への発展のしかたをさらに応用し、という手法でできている問題が目につくように思います。


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