慶大理工数学'07[A2]検討

[A2](解答はこちら) (1)は行列のべき乗の問題としては、最もポピュラーなタイプなので、落とすわけには行きません。計算ミスに注意しながら、ひたすら手を動かすのみです。

(2)も普通に等比数列が収束する条件を考えて平凡に計算すれば答は出ますが、固有値を使ってこの問題の意味を考えてみます(固有値についてはこちらを参照)。行列の固有値は、aに対する固有ベクトルはb に対する固有ベクトルはとなります(なので、)。つまり、
行列An回かけると、
また、1次独立なので、xy平面上の点Xの位置ベクトルは、cdを実数として、
の形に書くことができます。として、点の位置ベクトルについて、
 ・・・@
Xが原点を通り固有ベクトルの方向を向いている直線上の点である場合(kを実数として、)には、も直線上の点です。
Xがもう一つの固有ベクトルの方向を向いている直線上の点である場合(kを実数として、)には、も直線上の点です。
それゆえ、直線
を行列Aの表す1次変換の不動直線と言います(‘97年までの入試範囲でした)
以下、
Xは原点以外の点だとして、@式に沿って考えます。
のとき、
このときには、は、のとき、原点から遠ざかって行きます。
のとき、
このときには、より、は、のとき、直線:上を動きながら、原点から遠ざかって行きます。
のとき、
このときには、は、のとき、直線:に漸近しながら原点から遠ざかって行きます。
のとき、
このときには、より、は、のとき、直線:上を動きながら、 (直線:に漸近)となります。
のときが、本問の場合ですが、のとき、となります。
のとき、
このときには、は、のとき、直線:上を交互に動きながら、直線:に漸近します(を往復する感じになる)
のとき、
このときには、は、のとき、直線:に漸近しながら原点から遠ざかります(4象限と第2象限を往復する感じになる)
のとき、
このときには、は、のとき、直線:上を交互に動きながら、直線:から遠ざかります。
のとき、
このときには、は、のとき、原点をまたぐように往復しながら原点から遠ざかっていきます。

ムダなことをやっているように見えるかも知れませんが、受験生の皆さんには、この慶大理工の計算問題を解いたから、どうなのか、ということを考えて頂きたいのです。同じ問題が、慶大理工はおろか、東大でも東工大でも京大でも出題される可能性はありません(楕円の直交2接線の交点の軌跡が楕円の準円になるというような有名頻出問題は別として)。過去問を解くだけなら、来年の入試で出題可能性ゼロの問題を解くことになるのです。この方がムダと言えないでしょうか?
受験生の皆さんには、出題者の気持ちになって考えて欲しいのです。東大、東工大の先生がこの慶大理工の問題を見てどう思うかを考えて欲しいのです。おっ、慶大理工さん、なかなか面白い問題を出題しているじゃないか、ちょっと、これをもじった問題を考えてみようか、ということになるでしょう。過去問を解くだけでなく、その問題から派生して出てくることを検討しておくことこそがまさに来年の入試の準備に直結するのです。
この問題に限らず、過去問を解いたら、出題者はどのようにこの問題をアレンジするだろうか、ということを考えるように心がけて欲しいと思います。


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