京大理系数学'09[4]検討

[4](解答はこちら) 直交変換を題材とした問題で、当ウェブサイトの直交変換の記述を読んでいれば、言い方は違っていてもほとんどそのまま出題されているので、困ることはなかっただろうと思います。ですが、恐らく入試会場では、初見の受験生は難航したことでしょう。
'07年乙[6]の微分方程式もどきの問題でもそうですが、京大では、高校の範囲からやや逸脱したテーマの問題も散見されます。本問の直交変換も、大学の教養課程の「線形代数」の教科書に出てくる内容なので、大学入試以外のことには目もくれず、ということでなく、大学に進学したらどんなことをやるのだろう、というような感覚で、大学生向けの数学や物理の本にも目を通しておいてもらえると、本問のような問題にも手が着く、ということが言えます。
例えば、
2次方程式の理論は、3項間漸化式にもちょっと顔を出しますが、線形2階微分方程式:において、特性方程式:(3項間漸化式との間に関連性があります)は、微分方程式の解となる関数の挙動に大きな影響を与えるので、高校の範囲だけで見ていると味気ない2次方程式も、先に行ってこんなところで活躍するんだ、ということがわかれば、勉強する意欲も違ってくるのです。
行列では、直交変換だけでなく、固有値・固有ベクトル、ハミルトン・ケーリーの定理、基本変形、逆行列の一般論、スペクトル分解、など、大学の内容をある程度知っておいた方が、入試でも役立つ項目が多々あります。実は、こうしたことは、数学・物理全般について言えます。もちろん、先で習得する内容なので、すべてを理解することは難しいと思いますが、かじってみるだけでも意味があります。先に出てくる内容をある程度知った上で、高校数学・高校物理の基礎をしっかり固めておくとよいのです。
行列を対角成分に関して対称な位置同士で入れ替えてできる行列を転置行列と言います。直交変換を表す行列を直交行列と言いますが、直交行列では逆行列が転置行列になります。このことを利用して、のような
xy2次式の最大最小問題を簡単に解く技巧を考えることができます(座標回転して2次曲線の標準形に持ち込むことに相当する)が、入試問題でも出題されています。直交行列によって実対称行列(転置行列が元の行列と一致する行列)を対角化できる、という直交行列の背景がわかっていると、こうした技巧も意味がわかって使えるので、問題をスムーズに考えることができるようになります。
難関大学を目指す皆さんは、ぜひ、好奇心を広く持って幅広い観点から入試問題を眺められるようにして頂きたいと思います。


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