京都大学理系2010年数学入試問題

[1]
 1から5までの自然数を1列に並べる。どの並べ方も同様の確からしさで起こるものとする。このとき1番目と2番目と3番目の数の和と、3番目と4番目と5番目の数の和が等しくなる確率を求めよ。ただし、各並べ方において、それぞれの数字は重複なく1度ずつ用いるものとする。
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[2] 四面体ABCDにおいてはそれぞれ垂直であるとする。このとき、頂点A,頂点Bおよび辺CDの中点M3点を通る平面は辺CDと直交することを示せ。
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[3] xを正の実数とする。座標平面上の3ABPをとり、△APBを考える。xの値が変化するとき、の最大値を求めよ。
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[4] 数列は、すべての正の整数nに対してを満たしているとする。このとき、すべてのnに対してであることを示せ。
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[5] aを正の実数とする。座標平面において曲線 ()x軸とで囲まれた図形の面積をSとし、曲線 (),曲線 ()およびx軸で囲まれた図形の面積をTとする。このときST = 31となるようなaの値を求めよ。
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[6] 座標空間内で、OABCDEFGを頂点に持つ立方体を考える。この立方体を対角線OFを軸にして回転して得られる回転体の体積を求めよ。
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[1] 
[2]と同一


[2] 
[3]と同一


[3] 
[5]と同一


[4] とする。3辺の長さがabである鋭角三角形の外接円の半径が1であるとする。このときaを用いてbを表せ。
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[5] 次の問いに答えよ。
(1) nを正の整数、とする。で割り切れるがでは割り切れないことを示せ。
(2) mを正の偶数とする。で割り切れるならばまたはであることを示せ。
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[6] n個のボールを個の箱へ投げ入れる。各ボールはいずれかの箱に入るものとし、どの箱に入る確率も等しいとする。どの箱にも1個以下のボールしか入っていない確率をとする。このとき、極限値を求めよ。
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各問検討

[1](解答はこちら) ひょっとするとセンター試験よりも易しい確率の問題です。出題者としては、これくらいはできて当然と思っているのでしょうけれども、こういう問題の方が試験会場では大変かも知れません。つまらない勘違いをやってしまうと、それが大きな得点差となり命取りになります。時間的余裕があるなら、全ての場合を書き出してしまう、というようなことをやってでも、もれなく重複なく数えているか、数え間違いがないか、確認するべきでしょう。また、こうしたことは、普段からやっていないと、なかなか試験会場で気が回らないものです。基本問題であっても、時間のムダと思わずに確認するクセをつけたいものです。


[2](解答はこちら) 空間ベクトルの基本問題です。学校によっては、期末試験の方が難しい、というような学校もあるかも知れません。
ただ、教科書の例題、という雰囲気ではなく、ベクトル計算の過程でちょっと気づきたい部分があり、一応の受験準備が功を奏する問題ではあります。
ベクトルの図形問題では、点
Pを考えるときに、平面ベクトルであれば、

空間ベクトルであれば、

などととして、
1次独立なベクトル1次結合を呼ばれる形を作って考えるのが基本です。
もちろん、この問題でも、基本通りに進めて解答できますが、いつでも無理に基本通りでなければいけないと思わないで、問題の状況に合わせて柔軟な方針で臨めばうまく行くように問題ができています。
基本はもちろん大切です。難問でも、基本に戻って考え直すことによって道が開けることがあります。ですが、
1つの考え方に凝り固まってしまわずに、自然な流れに乗っていろいろと試してみる、というフトコロの深さのようなものも大切にしましょう。


[3](解答はこちら) 本問は、角の最大をどうとらえるか、ということも課題ですが、直線とx軸とのなす角の正接を考えれば、関数
の最大値をどうやって求めるか、という問題に帰着します。
最大、最小の問題なので、機械的に微分してしまいがちです。

において、ではでは,よって、で極大かつ最大で、最大値はとなります。
微分による解法の場合、微分の計算が煩雑になることが多く、導関数が必ずしも見やすい形にならないこともありますが、時間をかければ必ず解答できるという安心感があります。ですが、面倒な微分の計算をし終わってから、別のラクな解法に気づいても手遅れです。
本問では、解答のように相加平均・相乗平均の関係を利用するという技巧を用いることにより、煩雑な計算なしで最終解答が得られます。
但し、相加平均・相乗平均の関係では、等号成立条件が必ず成立するというわけではありません。
例えば、の最小値を求める問題で、という条件がつくと、の等号成立条件,つまり、が成立せず、最小値を求めることができません。
ですが、技巧がうまく使えない、ということに気づくのに大した時間はかからないでしょう。
従って、こうした最大最小問題では、最初から微分して後でラクな解法に気づいて後悔する、ということにならないように、まず、微分を使わない解法を試し、うまく行かなかったら、微分する、という方針で行くべきです。
ちなみに、本問では、

とおいて、分母を払い、2次方程式:
が実数解をもつ条件、
判別式:
より、
として、最大値
1を求める、という解法もあります。


[4](解答はこちら) 解答に書いた通り、「数学的帰納法」が浮かべば一本道の問題のはず、なのですが、本問のような問題文の場合、
 ・・・()
を必至に証明しようとして難航する受験生の姿をよく見かけます。しかし、どうやってみたところで証明できるはずがありません。()は証明の仮定であって、証明すべき対象ではないからです。証明すべき対象は、すべての正の整数nに対して「」になることです。
こうした受験生でも、「すべての正の整数
nに対して3で割ると1余ることを示せ」という問題文だと、数学的帰納法を使って(二項定理でも簡単ですが)きちんと証明できます。本問のように、証明すべき命題の中に仮定とする式が紛れていると間違う人が出てくるのです。
とにかくそこに‘
n'の出てくる式が書いてあったら、それを証明するのが「数学的帰納法」ということではありません。「AであればB」、つまり、「A B」を示すのであれば、示す対象はBであってAではありません。
私は、これは「数学的帰納法」の理解の問題、というよりも、論理構造の読解の問題、という方が良いように思います。日本語は、情緒的な言語で、論理構造を的確に表現するのに向いている言語とは言えないような気もするのですが、さりとて、数学的帰納法の論理構造は、できる限り多くの人に知っておいて欲しいことがらです。
また、こうした間違いが起こることの背景には、討論することをあまり好まず、はっきりと発言する人を見ると遠ざけたいと感じることが多い、日本人の習性のようなものがあるような気もします。同じ電磁波なのに、照明の光は美しいと感じて、携帯電話の電波は危険と感じる人がいる
(確かに周波数は違いますが)、というのも、同じようなことかも知れません。あるいは、買い物をしたときに、「ありがとうございました」と言われて、本当にこの店員さんは「ありがとう」と思っているのか怪しく感じることがある、ということにも共通するものがあるかも知れません。
ですが、もし、携帯電話の電波が人体に危険だ、と、主張するのであれば、科学的に論理的に証明できるのでなければ説得力がありません。科学の分野では、「ありがとう」と言われたら素直に感謝の気持ちを受け取り、感謝してもいないのに口先だけ「ありがとう」と言うことがないような文化を作らなければいけないと、私は思います。「
AならばB」と言われたら、Aが仮定であってBが対象である、という論理構造を正確に意識するべきです。同じ日本語でも、好きなのに「嫌い!」という言葉を投げつける文学分野と、論理構造を明確にすべき科学分野とでは、言語が違う、と、思うようにするべきなのでしょう。


[5](解答はこちら) 実力充分の受験生であれば、問題なくこなすことのできる問題ですが、これから受験準備を始めようという方が、この問題を解いてみてどう思うか、ということが気になります。
の交点を
aとして、積分計算をして面積Tを求めると、aaが混じった式になります。問題文では、条件を満たすaの値を問うているので、Taだけを用いて表さなければ、最終解答に到達できません。そこで、aaで表さないといけない、ということになるのですが、これがうまくいかない、というところが、この問題のポイントです。諦めの早い受験生だと、aを消せない、という時点で見限ってしまうかも知れません。
ですが、
Tの式にaが残っていると言っても、という形で残っていて、であれば、aを用いて表すことができるので、aを消去して、Taだけを用いて表せるのです。固定観念にとらわれずに、ちょっと視野を広げてみれば、別の見方が見えてくる、ということだと思います。
実際には、学校や塾で教わって、一つの技巧の知識として持っているので、この問題はこうやればできる、として解答した受験生が多く、出題者の意図通りになっていないと思いますが、本来であれば、教わっていなくても、試験場で、
aで表せている、ということに気づいて、解けて欲しい問題です。
こちらをご覧の皆さんに申し上げたいのは、本問では、
aaで表さないといけないという固定観念にとらわれないようにして頂きたい、ということです。自分は決めてかからないと解けない、と、思い込んでしまう受験生が多いのですが、一つの問題の見方を決めつけて見るようにしないで頂きたいのです。昨日はうまく行ったけれども、同じ方法で取り組んだら今日はうまく行かなかった、ということはよくあることです。野球の投手が毎日同じ攻め方をしていたら、バッターの方は学習してしまって、次に来るボールをあらかじめ予測してしまうようになる、というようなこともあります。受験生の大半がこういう考え方をするだろう、と思うと、出題者側は必ず裏をかいてくるのです。正攻法はこうだが、裏をかかれたらどうするか、裏の裏をつかれたら、という感じで、全ての問題の解法パターンをあらかじめ知識として持とうとするのは無理です。
試験会場で、異なる観点からものを眺めることができるように、いわゆる「常識」的なものの考え方だけで全てを見限ることのないようにしましょう。



[6](解答はこちら) 解答にも書いた通り、本問は過去に別の大学の入試問題として採り上げられたことのある問題です。回転体の体積を求める問題でも、曲線を回転するというのではなく、図形や立体を回転する、という問題があります。本問では立方体を回転するのですが、回転軸から最も遠い点を探すことがポイント、という点では、他の回転体の体積の問題と共通です。この手の問題の中で特徴的な問題と言えるので、理工系大学志望者が全員、体験しておくべき問題だと私は思います。
回転体を回転軸に垂直な平面で切ったときの断面内のすべての点について、回転軸との距離を考え、その最大値を,最小値をとして、断面は、半径の円から半径の円を切り抜いた図形になります。
tは、回転軸に沿う方向での基準点から距離とします。回転体の体積Vは、断面積をtについて積分し、であれば、
として計算できます。どういう図形を回転する場合でもこの考え方は同じです。一度体験して納得しておけば、試験場でまごつくこともないでしょう。
一つ申し上げておきたいのは、受験準備のための限られた時間を有効に使うために、本問のような特徴的な問題、この一題を解いておくと幅広い応用が利くような問題を選んで解いていくように心がけて頂きたいということです。同じようなタイプの問題を数多く解けば、頭脳への沈着度は高くなりますが、時間的制約のために、覚えておける解法パターンの数は限られてしまいます。一度問題を解いて終わり、ということにせずに、何度か復習するようにすれば、同一タイプの問題を少なく抑えることは可能なはずです。勉強の密度・効果を高めるように工夫しましょう。
また、難関大学の入試問題の中には、過去問では見あたらないオリジナリティー溢れる問題もあるので、問題を見てから新鮮な気持ちで解法を考える、というトレーニングももちろん大切です。それと並行して、解法パターンのレパートリーを効率的に増やしておく努力も続けるようにしてください。



[4](解答はこちら) 解答では、正弦定理と余弦定理を用いましたが、余弦定理を使わなくても解答できます。
bの値を求めるだけなら大した問題ではないのですが、この問題のポイントは、三角形が鋭角三角形であることをどうやってチェックするか、というところにあります。解答のように、長さabの辺と向かい合っている角をABCとすれば、正弦定理を用いて、であることがわかります。これで、となります。また、から,つまり、もわかります。
これでとなるので、,あるいは、を確認できればよいわけです。解答では、
b2次方程式がの範囲に解をもつ条件を調べました。ですが、以下のようにする加法定理を用いる解法も考えられます。

とおくと、
より、においては減少関数で、,つまり、
が確認できて、
が求める解だということがわかります。
易しそうな問題に見えても、答案の論理をしっかり見ようという京大数学の方針を、本問で感じ取るようにしてください。



[5](解答はこちら) 本問は、(1)は数値代入していけば数学的帰納法が見えてきますが、(2)は少し難航するかも知れません。
(1)は、「nを正の整数、とする。」と言われた時点で、nに数値代入して、のときのとき,・・・、という具合に進めて行くのが定番と言ってもよいので、試験会場でも必ず思いつけるようにしてください。
で割り切れるがでは割り切れない」というのは、を素因数分解すると、の形になる、ということなので、正の奇数を
pとして、
とおくことになります。
のときには、
のときには、
のときには、
という流れが見えてくれば、に偶数をかけてになり、さらに偶数をかけてになる、というところから自然に数学的帰納法の枠組みに行き着けるでしょう。

(2)は最初から結末までのストーリーを見透かすのは困難です。(1)とのつながりから、正の偶数mを、素因数分解の形を考えて、 (qは正の奇数)とおくことになります。また、「で割り切れる」という問題文から、として、(1)を用いて、
とおき、
という因数分解を考えれば道が開けます。
一気に解決しようと欲張らないで、問題文から得られる情報を数式化し、
(1)の結果を利用しつつ、一つずつていねいに片付けていけば、自然な流れに乗ることができると思います。
結局、ある程度のレベルの問題を自力で解いた経験と、問題文を論理的に読解する力があれば、京大理系を制覇できる、ということです。自力で解く問題と言っても、あらゆるパターンの問題を網羅的に解く、という必要はありません。受験生一人に与えられた時間を考えてもそれは無理というものです。特徴的な問題を週に数題じっくり時間をかけて取り組む、ということを考えてください。読解力をつけるために、私は、友人同志で何かテーマを決めて、論説文を書き、お互いに読み回して討論してみることをお奨めします。感情的にならずに冷静に討論するためには、どう論述すればよいかというトレーニングをするうちに、書き手の気持ちを探る読解力もついてきます。



[6](解答はこちら) 多数の項の積になる確率の対数の極限が、区分求積法によって定積分になる、という流れは、定型パターンの問題と言えると思います。本問を見ておけば、今後、類題に当たっても対処できるでしょう。
ですが、確率の考え方自体は、定型的に思わない方がよいと思います。というのは、本問のような問題で、個の箱に
n個のボールを入れる場合の数が、通りになって、通りにならないのか、わからない、PCの違いがわからない、という、疑問を抱く方がいるからです。この場合は通りで、別の場合では通り、というように、パターン化して扱おう、と、発想せずに、問題ごとに考えるようにして頂きたいと思います。
くらいで具体的に見てみましょう。本問の場合、
6個の箱(1〜箱6とします)があり、3個のボール(ABCとします)の各1個について、等しい確率6個の箱のいずれかに入ります。どの箱にも1個以下のボールしか入らない確率を求めることになります。だとすると、
ボールが1個ずつ3個の箱に入るとき、6個の箱からボールの入る3個の箱の選び方が通り、
ボール
2個が1個の箱に入りボール1個が別の1個の箱に入るのは、6個の箱からボール2個の入る1個の箱の選び方が6通り、その各1通りについて、ボール1個の入る箱の選び方が5通りで、通り、
ボール
3個が1個の箱に入るとき、6個の箱からボール3個の入る1個の箱の選び方が6通り、
求める確率は、 ・・・@
と考えるのは、誤りです。というのは、
ボールが
1個ずつ3個の箱に入るときの場合の数を20通りとしていますが、そのうちの1通り、例えば、箱1と箱2と箱31個ずつボールが入る場合と、
ボール
3個が1個の箱に入るときの場合の数を6通りとしていますが、そのうちの1通り、例えば、箱13個のボールが入る場合とが、
同様に確からしい、とは言えないからです。
1と箱2と箱31個ずつボールが入る、とは、言っても、箱1A,箱2B,箱3Cが入る場合、箱1B,箱2C,箱3Aが入る場合、など、6通りの場合があるのに対し、箱13個のボールABCは入る方は1通りしかありません。
本問では、ボール各
1個は「どの箱に入る確率も等しいとする」という前提で考えています。「箱1A,箱2B,箱3Cが入る場合」と「箱13個のボールABCが入る場合」であれば、同様に確からしいとは言えますが、@式の分母の20通りと30通りと6通りとでは、その各1通りが同様に確からしいとは言えないのです。
本問では、全事象は、ボール
Aの入り方が箱1〜箱66通り、ボールBについても6通り、ボールCについても6通りで、通り、とすれば、この各1通りが「同様に確からしい」と言えるようになります。
そのときに、どの箱にも
1個以下のボールしか入らない、という場合の数は、ボールAが箱1〜箱66個の箱のどれかに入り、ボールBについて、ボールAが入らなかった箱5個のどれかに入り、ボールCについて、ボールABが入らなかった箱4個のどれかに入るので、通り、
求める確率は、,つまり、
となります。
ですが、もし、
3個のボールの入れ方通りの各1通りが同様に確からしい、という設定の問題であれば、答えはになります。
つまり、何を同様に確からしいと考えるか、ということによって、通りか、通りか、ということは違ってきます。重要なことは、事象
Aの起こる確率:において、分母と分子すべてにわたって、何を同様に確からしいとしているか、という考え方が揃っている、ということです。



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