行列の累乗

この項目では、固有値・固有ベクトルハミルトン・ケーリーの定理行列の対角化スペクトル分解を参照してください。
大学入試で頻出の行列の累乗の問題を考察します。様々な解法が考えられます。
以下、
nを自然数とします。

(1) 予測して数学的帰納法で証明する
簡単に行列の積が計算できそうなものについては、
,・・・と求めていき、予測をつけて、証明をしておきます。
1のとき、を求める。
[解答] 


これより、と予測し、数学的帰納法で証明します。
(T) のとき、明らかに成立します。
(U) のとき、予測が正しいとして、と仮定すると、

 
 
となり、のときにも予測は正しい。
(T)(U)より、すべての自然数nについて、予測は正しく、
......[
]

以後(2)(6)は、について、を求める方法を考えます。
(2)(3)において、固有値・固有ベクトルを利用するところは共通しているので、固有方程式を作り、固有値・固有ベクトルを求める部分を、こちらに書いておきます。例2.例3.はこのつづきになっています。
Aの固有方程式は、より、


のとき、

例えば、
固有値2に対応する固有ベクトルは、tを実数として、
のとき、

例えば、
固有値3に対応する固有ベクトルは、sを実数として、

(2)
固有値・固有ベクトルの応用
2.上記より、Aは、固有値2に対応する固有ベクトルをもち、固有値3に対応する固有ベクトルをもちます。
よって、

繰り返して行列Aをかけることにより、

両式を1つにまとめて書くことにより、

両辺に右から、をかけることにより、

  ......[]

(3)
対角化により求める
3.上記より、とすると、

これを用いて、

 
一方、 (きちんと書くなら数学的帰納法で証明しておくべき)
よって、
左からP,右からをかけて、

 
  ......[]

(4)
(6)については、固有値・固有ベクトルを求めておく必要はありません。ハミルトン・ケーリーの定理によって得られる行列の式を書いて因数分解すれば、固有値を知ることができます。
2次の正方行列Aでは、ハミルトン・ケーリーの定理は、という形になります。

(4) ハミルトン・ケーリーの定理と多項式の除算を利用する
4.ハミルトン・ケーリーの定理より、
で割った余りを,商をとして、
 ・・・@ (多項式の除算を参照)
@で、とすると、 ・・・A
@で、
とすると、 ・・・B
B−Aより、
3−B×2より、
@のxAに戻すと、

 
 
  ......[]

(5)
スペクトル分解の利用
この方法がもっとも計算がラクで、大学入試の問題文に解法についての指定がなければ、この方法がおススメです。
最初に、ハミルトン・ケーリーの定理を因数分解した形に書いておきます。
5.ハミルトン・ケーリーの定理より、
 ・・・@

 ・・・A (これがAのスペクトル分解の形です。固有値2に対応する射影子がP,固有値3に対応する射影子がQですが、こういうことを入試の答案に書く必要はありません)
これらを連立して解くと、


(
射影子PQは、必ず、ハミルトン・ケーリーの定理の因数分解の中に出てくる形になります)
@より、 ・・・B
@より、
 ・・・C
(B,Cは射影子が必ずもっている性質ですが、高校の教科書には記述がないので、@を使って確認したことを答案上に明記しておくこと)
A両辺をn乗することにより、

右辺のn乗は、B,Cにより、二項定理を使って展開可能で、さらに、 ()という項はBより出てきません。さらに、Cより、のとき、より、

 
  ......[]
結局、m次正方行列Aが相異なる固有値,・・・,をもち、それぞれに対応する射影子が,・・・,だとすると、

となります。

(6) 3項間漸化式のアナロジー
3項間漸化式と類似の形をハミルトン・ケーリーの定理から作り、3項間漸化式の解法と同様に2つの漸化式を作って差を作り行列の累乗を求めるという解法があります。
6.ハミルトン・ケーリーの定理より、
をかけると、 ・・・@
@
 (公比3の等比数列のような形)
これを繰り返して用いることにより、
 ・・・A
また、@

これを繰り返して用いることにより、
 ・・・B
A−Bより、
 
  ......[]

さて、(2)(6)の解法では、固有方程式が重解をもつ場合に対応できません。
固有方程式が重解を持つ場合でも、対角化と同様な作業を行うことにより
Jordanの標準形を作って行列の累乗を求めるという解法が考えられます。ですが、それよりもずっと計算のラクな解法があります。固有値が重解をもつ場合には、入試問題文に別の解法で徳用に指定がついている場合でも下記の方法で行列の累乗を求めることをおススメします。

(7) 2次の正方行列で、固有方程式が重解をもつ場合
ハミルトン・ケーリーの定理を書くと、
2乗=O の形に書くことができます。この形をうまく利用して、スペクトル分解と同様の考え方により、行列の累乗を求めます。
7のとき、を求める。
[解答] ハミルトン・ケーリーの定理より、 ・・・@
は積が交換可能、つまり、なので、

として、両辺をn乗すると、二項定理が使えます。

この右辺で、@より、の部分は消えてしまい、の項のみが残ります。

 
 
  ......[]


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