東大理系数学'08前期[6]検討

[6](解答はこちら) 私は、この問題は悪問だと思います。高校の先生方の中には、高校数学の基本ができているかを見る良問だとおっしゃる先生もいらっしゃると思いますが。
私が、この問題を悪問だと思う理由は、試験開始後に全問を見渡して、この問題を最初に手がけた受験生の涙が見えるからです。東大の先生がどういう採点を行ったかわかりませんが、微分してきちんと増減表を書いて、グラフをきれいに描いている解答にプラス点を与えているのでしょうか?正解に到達するためには不要となる事実であっても、正しい事実が書かれているのであればプラス点をつけるという採点をやってくれているのであれば良問かも知れませんが、悪戦苦闘してグラフを描いたのにもかかわらず定積分計算をミスして零点にされてしまった上にペースを崩して他の問題に集中することができず、実力を発揮することなく敗れ去ってしまった受験生が多々いるような気がします。

過去問を見ても、東大数学は、
'08年前期[5]のような良質の問題、'08年前期[4]のような受験技巧で対応できる問題のほかに、'08年前期[3]のような見た目大変そうでも実際には大したことがない問題、この問題のように見た目取っつき易そうでも不覚をとる原因になり易い問題も出題しています。
すぐに思い浮かぶのは、東大文系
'91年前期[1]
の、区間での最大値と最小値を求めよ。
という問題です。ご覧の皆さんも、こんな易問でどうして不覚をとるのか、と、お思いなら、ぜひ取り組んでみてください(だから、というのはダメです)。試験会場でこの問題にはまりこんでしまえば合格の2文字は非情にフェードアウトします。
もちろん、本当に実力のある受験生であれば難なくクリアできるのですが、学校の練習問題の感覚で取り組むと泣くことになるのです。この問題が、意地悪な教授によって実に精密に練り上げられた、東大ならではの難問だということは見た目では判断がつきません。
ほかにも、理系
'94年前期[1]

とする。このとき、以下のことが成り立つことを示せ。
(1) 任意の実数xに対し、である。
(2) 方程式はただひとつの実数解aをもち、となる。
理系‘96年前期[2]
abcdを正の数とする。不等式 を同時にみたす正の数stがあるとき、2次方程式の範囲に異なる2つの実数解をもつことを示せ。
など、勉強家の受験生が注意しなければいけない問題があります。よく勉強してきた受験生ほど、'94年前期[1]ではのマクローリン展開が、'96年前期[2]ではハミルトン・ケーリーの定理が頭に浮かんでしまうのです。'94年前期[1]では、あっと驚くスーパー解法で解いたという受験体験記が雑誌「大学への数学」に紹介されていましたが、平凡に微分していけば解決します。'96年前期[2]は、平凡に、判別式、軸の位置、端での2次関数の値を調べれば解決します。こういう問題を見ていると、東大の教授がアンチ受験勉強という発想をしていることを感じるのです。なまじ重箱の隅をつつくような受験技巧は知らない方が素直に解けて良い、ということもあるので、東大受験生は、勉強をし過ぎないように充分に注意してください。それよりも、あなたの才能を社会の困難な問題点の方に向けて欲しい、というのが私の願いです。

逆に、理系
'98年前期[4]
実数xに対してをみたす整数kで表す。nを正の整数として、
とおく。個の整数,・・・,のうち相異なるものの個数をnを用いて表せ。
のように、見た目仰々しく、受験生が怖じ気づいてしまうような問題が、実は、高級な技巧を持ち出さずとも、3次関数のグラフと接線の傾きを調べていけばできてしまう見かけ倒しの問題だったりします。

さて、本問:
'08年前期[6]に戻ります。
この問題のポイントは
2つあって、どういうグラフをしているのか、ということと、定積分の計算方法の2点です。
東大受験生に限らずとも、面積を求める問題で、普通の受験生が、一々、微分してグラフを書くでしょうか?私は、この問題では、解答に書いたような詳細な検討をしなくても、値を適当に代入してプロットしグラフを答案用紙に描いておけば充分だと思います。たとえ、減点されたとしても、減点幅は大したことはなかっただろうと思います。面積を求めることが問題の要求だからです。
この問題の定積分の計算はかなり面倒なので、焦らずに効率的に計算する方法を考えるべきです。市販本にいろいろな考え方が紹介されています。どういう方法でも良いので、計算の効率化を考えるべきです。

[1][5]を先に解いて、あと数十分という段階でこの問題を解き始めた受験生は、恐らく、上のような発想をして取り組んだだろうと思います。微分する時間的余裕も精神的余裕もないでしょう。計算ミスさえしなければ、数十分で充分に正解にたどり着ける問題です。試験会場で、どういうストラテジーを建てたかで運不運が分かれてしまう、という問題が、受験生の実力を評価するのに適切な問題だとは、私には思えません。

しっかりと受験準備をしてきた実力のある受験生が泣くことにならないように、この問題で、東大受験の注意点をしっかりと頭に叩き込んでおいてください。


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