東大理系数学'09前期[4]検討

[4](解答はこちら) 本問の解答のところで、「積分計算に手を焼いて涙を飲んだ受験生も多いだろう」と書きましたが、[1]の検討でも参考にした、雑誌「大学への数学」の受験報告によると、本問の正答率は私の予想を超えるものだったようです。東大理系を狙う方は、まずは、この問題を自力で解けるようにすることを目標にして頂きたいと思います。
この問題の難しいポイントは
2つあって、1つは、円板という変なものを回転させたときの通過領域の体積を求める、という点で、もう1つは、立体の体積を定積分により求めようとすると積分計算で行き詰まる、という点です。(1)は前者、(2)は後者がポイントになっています。
雑誌「大学への数学」の受験報告を見ると、
(1)は合格者の大半が正答に至っていて、(2)もかなりの合格者が「はさみうち」に気づいているようです。
(1)は、難関私大でも時々見られる問題で、参考書などにも記述がある技巧を用います。立体の断面に着目し、「変なもの」と断面との共通部分になる線分を回転させたときの通過領域を考えます。通過領域の面積は、線分と回転軸との距離の最大値を半径とする円の面積から最小値を半径とする円の面積を引いたものになり、この面積を回転軸に沿って積分すれば立体の体積を求めることができます。この技巧をマスターしていれば(1)は解答できます。
(2)は、技巧と呼べるものではなく、試験会場で危機的状況に陥ったときの臨戦的な実力が問われています。(2)を解答できるようにするためには、受験技巧を磨くことよりも、日頃から難問をじっくりと自分の頭で考え抜くことをどれだけやっているか、ということが大切なのです。
(1)はしっかり受験勉強しておけばできるはずの問題ですが、(2)は定積分の計算を続行するかどうか、他の方針に転換するかどうかの見極めが必要で、高度な状況判断力、意思決定の決断力、といったものが必要になります。つまり、東大合格のためには、まじめに勉強することはもちろんで、その上に、普通の人が見向きもしないような困難にも積極的に挑戦していく気力が求められるのです。東大を狙う方は、この辺を充分に意識してください。
じっくり考えるべき問題は、必ずしも数学の難問である必要はありません。複雑怪奇な推理小説の犯人捜しでもよいし、社会問題でもよいのです。少子高齢化の前に立ち行かなくなっている日本経済を打開するために新産業を起こす必要があるが、産業政策を進めると環境破壊も進んでしまう、というような二律背反的な問題、普通の高校生が見向きもしないような問題でも、図書館で本を借りてきてじっくり考えてみる、というような、一見、入試とは無関係に思われる努力が、入試会場で実を結ぶことがある、ということを、本問が教えてくれています。
受験生の皆さんが、将来、技術者、研究者として、社会の第一線に立つとき、ロボットの開発でも、磁気材料の開発でも、クリーン・エネルギーの開発でも、微細化技術の開発でも、最後の最後で、とても越えられそうもない二律背反的な難題が立ちはだかって頭を悩ませるような事態が必ず起こります。このとき、難題が解けそうもないから、ということで難題から逃避してしまえば、二流の技術者で終わってしまうでしょう。受験生のうちから、強い意志をもって困難にぶつかって行く気力を磨いておくように心がけましょう。


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