早大理工数学'10[5]検討

[5](解答はこちら) 何人の受験生が完答できたのだろうかと思ってしまう難問です。本問のヤマは(3)にあり、(1)(2)(3)への誘導になっています。
結局、本問の仕掛けの中核部分は、解答途中の,つまり、表が回以上出る確率が、で打ち消し合うところにあるのですが、
(1)(2)の誘導だけでは、とても、このことに気づけないと思います。
参考書・問題集の解答を読んでいて思うのですが、どの本も、問題文のあとに「解答のポイント」とかが書いてあって、そこから一足飛びに解答まで一直線に進んでいくように書かれています。
紙面の都合などがあって、余計なことを書く余裕はないのだろうと思いますが、私は、これで、受験生の補助教材と呼べるのだろうか、と、思ってしまいます。
受験生が、こうした参考書を読んでどう感じるのでしょうか?
数学の問題は、問題文を見るなり、解答の方針を思い浮かべて道草をすることなく一本道で解かねばならないもの、と、思い込むではないかという気がするのです。問題文を見て解答の方針が思い浮かばないのは劣等生で、一気に解答が書けないのは努力不足なのだろうと、自己嫌悪に陥ってしまわないか、と、私は危惧してしまいます。
塾・予備校の授業でも、本問のような難問を、頭脳明晰な有名講師が鮮やかに解いて回るのを見て、受験生が、すごいなあ、と、驚嘆するのであれば、私は、実はほとんど教育効果は存在しないのではないか、と、考えています。
標準的な受験生が努力をして難関大学に挑戦するときに大切なことは、いろいろと試行錯誤し、苦悩し、工夫して、最終解答にたどりつくことだと私は思います。解答が書ければ、もちろん嬉しいですが、数学・物理の楽しさが最も大きいところは、解答が書けたところにあるのではなく、問題の本質がつかめずに紆余曲折しながらあれこれと思い悩むところにこそあるのではないか、と、私は思うのです。
であれば、参考書や問題集は、誤答例や失敗例などを中心に書くべきではないか、と、私は思うのです。読者には、その情報の多くは無意味なものであるかも知れませんが、少なくとも、入試問題の模範解答と言っても、さまざまな失敗の積み重ねの上に成り立っている、ということが受験生に見えるのではないかと思うのです。
また、塾・予備校でも、予習なしでやってきて授業中に行き詰まり立ち往生してしまう講師が、最も、受験生にとって教育効果の高い講師だ、と、私は思うのです。その講師が汗をかきながら苦し紛れにやっていることこそ、受験生がまさに試験会場でなすべきことだからです。ですが、残念ながら、日本では、塾・予備校経営者が、こうした善良な講師に、できそこないのレッテルを貼ってしまうのが現実ではないかと思います。
今、新しい情報端末が脚光を浴びていて、電子書籍元年などと言われていますが、今から
20年以上も前に電子書籍の開発に取り組んだことのある私としては、電子書籍ごときの普及に随分と時間がかかるもんだ、と、複雑な気持ちにさせられるとともに、真に、明日の日本の科学を担う世代の育成に役立つような電子書籍版参考書を、既存の紙ベースの出版社が企画してくれないか、と、期待してしまいます。電子書籍であれば、紙面の都合などという制約はなくなります。読者が不要と考えれば、失敗例の記述をパスして読めばよいのです。
本ウェブサイトの解答は、本問に限らず、ご覧の皆さんは、何でこんな回り道をするのか、と、感じると思います。一つには、実際に試験場でどういう道筋で解答にたどり着くのか、そのライブ感を伝えたい、という想いがあります。普通の受験生が本問の
(3)を一本道で解答するのは無理というものです。もちろん、受験生一人一人で、どういうアプローチを取るか、個性もあると思うので、ご覧になっている皆さんは、もっと別のアプローチを取るかも知れません。本ウェブサイトでは、こうやれば、制限時間内に充分に問題を解いていくことができる、という一つの例を示しているに過ぎません。何を悪戦苦闘しているのか、苦労して解いているんだな、と、感じて頂ければ幸いです。
本問では、もう一点、
(3)の結果の美しさにも感動させられます。入試問題として適切な問題か、という点ではやや疑問符がつきますが、受験生に、より高く跳躍しようという意欲を起こさせる、良問だと私は思います。どうやって、思いついた問題なのかわかりませんが、出題者の先生には敬意の気持ちを表したいと思います。

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