黒体輻射


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1860年代、「現状の大問題は言論や多数決によってではなく、鉄と血によってのみ解決される」という演説を行った鉄血宰相ビスマルクの下で、当時のプロシャは、ドイツ統一を図るべく重工業推進の軍備増強政策をとり、強い鉄鋼を製造するための技術開発に邁進していました。そのためには、溶鉱炉内の温度を溶鉱炉内の光の色で判断していた職人の「目」を理論的に解明し、溶鉱炉の中で溶融した鉄鉱石が放つ光の色を制御するべく、ドイツでは黒体輻射の研究が大きく進歩しました。
黒体というのは、光を吸収するだけで放射することのない黒い物体のことを指します。ススで真っ黒になった溶鉱炉内部がまさにそれに相当します。物理的には、光が一度入り込むと出てこれない小さな入り口をもつ空洞としてモデル化されます。

1879年、オーストリアのシュテファンは、物体の熱放射の全エネルギー絶対温度4乗に比例することを発見し、1884年に、弟子のボルツマンとともに、熱力学を用いて、シュテファン・ボルツマンの法則として理論的に説明しました。
黒体輻射の
エネルギーは、黒体の温度とそこから放出される光の色(光の波長)との間に右図のような関係があります。温度があまり高くないうちは赤い色の光を放出しますが、温度が高くなるに従ってエネルギーが最大になる波長が短くなり、橙色、黄色、白い光が主になってきます。
イギリスのレイリーは、
1889年、黒体のモデルとなっている空洞内で、マクスウェルの電磁場方程式から定常波となっている電磁波の波動を求めました。定常波の波長は気柱の振動と同様にとびとびの値をとりますが、波長の間にある波動の状態の各々がエネルギー等分配則からエネルギー (k:ボルツマン定数、T絶対温度)を持つとしてスペクトル分布を表す式を求めました。この結果は、それ以降も、レイリー自身、またジーンズにより修正がなされて、単位体積当たり、
 ・・・@
という式を得たのですが、長波長側では実測と合いますが、短波長側では実測と全く合いませんでした。また、全エネルギーを計算すると無限大に発散してしまうという問題点を持っていました。
ドイツのウィーンは
1893年、ボルツマンの手法を黒体輻射に応用し、エネルギー最大となる波長温度に反比例することを導きました。これをウィーンの変位則と言います。
さらにウィーンは、
1896年、空洞内の波長λ電磁波エネルギー (hcは定数)を持つ古典力学の粒子として理想気体のように振るまうとして、気体分子運動論と同様の考察から、単位体積当たり、電磁波のエネルギー分布を与える式、
 ・・・A
を導きました。これをウィーンの輻射式と言います。これは、短波長側では実測とよく合うものの、長波長側で実測と合いませんでした。

ドイツのプランクは、ウィーンの理論を考察する中で、空洞内では電磁波が固定端の
弦の振動と同様に定常波を作っており、定常波のエネルギーが、最小単位の整数倍、という、とびとびの値のエネルギーを取る、という仮定を置きました。νは電磁波の振動数hは定数で、プランク定数と呼ばれ、現在では、と求められています。定常波というアイデアはレイリーと同じ、エネルギーに最小単位がある、というアイデアは、陰極線に最小単位「電子」があると考えたストーニーと同じ(電子を参照)です。
さらに、プランクはこれらの定常波が
温度Tの熱源に接していて熱平衡にあるとして、系をボルツマン分布に従う正準集団(統計力学の基礎を参照)と考え、定常波がエネルギー ()をもつ確率 (k:ボルツマン定数)で与えられると仮定しました。
 (等比数列を参照)
より、
とすれば全確率が1になります。エネルギーの平均値は、
で与えられます。より、nが充分に大きく、のときには、より、,これを使うと、
 ・・・B
ところで、弦の振動と同様に考えて、長さLの中に入る電磁波の固有振動の波長です。電磁波の伝播速度光速cなので、固有振動の振動数,電磁波の振動数νはこのn倍が可能なので、
 ・・・C
電磁波の振動はx方向、y方向、z方向のいずれも可能なので、それぞれの振動数とすると、
ところで、半径nの球と半径の球の間の球殻にある格子点の数は、半径nの球の表面積に球殻の厚みをかけた球殻の体積で与えられ、このうち、を満たすものはこので、だけあります。Cを用いて、より、電磁波の振動の個数は、
さらに、偏光の自由度が電磁波の進行方向に対して垂直に2方向あるので、エネルギーの平均値がBとなる電磁波の状態数は、 (空洞の体積)として、だけあって、振動数νに対するエネルギーは、
 ・・・D
で与えられます。より、電磁波のエネルギー波長との関係は、より、
 (マイナスを省いています)
 ・・・E
これが、黒体輻射のエネルギー分布としてプランクが得た式(プランクの輻射式)です。
(マクローリン展開を参照)より、波長λが大きくが小さいとき、Eは、
より、
これはレイリーとジーンズが得た@です。
一方、のとき、つまり、
温度が低いか波長が小さいとき、Eの分母の1が無視できて、
これはウィーンの輻射式Aです。
全エネルギーは、Dをとおいて置換積分すると、より、
(計算は省略)となるので、全エネルギーが発散することはなく、
全エネルギーに比例し、これはシュテファン・ボルツマンの法則です。
Eでとおくと、

とおくと、
とすると、 ・・・F
なのでですが、のときですが、のとき、は有限な数ですが、なので、Fはの範囲に解を持ちます。この解を
α(ほぼです)とおくと、,即ち、各温度に対して、上図でエネルギーを最大とする波長とすると、 (= 一定)となりますが、これはウィーンの変位則です。
しかも、プランクの輻射式は、
全波長に渡って実測値とよく合っていました。こうして、1900年、プランクは、光(電磁波)エネルギーは連続的な値を取るのではなく、最小単位の整数倍の値のみ取る、という結論(プランクの量子仮説と言います)に至りました。それが持つ意味については、アインシュタインの光電効果の説明(1905)固体比熱の理論(1907)を待つことになります。


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