愛媛大物理'09[4]

1(a)のように、断熱材からなる内径断面積の円筒型シリンダーと質量のピストンが水平に設置してある。ピストンはシリンダー内を円滑に動き、シリンダーとの間の摩擦は無視できる。シリンダーの両端にはピストンにより隔たれた気密性の高い2つの空間(A室およびB)が存在し、それぞれに気体を封入できる。また、B室には通電加熱によるヒーターが設置してあり、必要に応じて気体を加熱できる。
いま、単原子分子からなる理想気体を両室に
1モルずつ封入したとき、ピストンはシリンダーの中央でつり合い、そのときの両室の圧力、体積、温度は、それぞれであった。シリンダーの中央を座標原点Oとして、A室側へのピストンの変位を正とし、ピストンの運動は可逆的になされるものとして、以下の問いに答えよ。

1 外部と熱のやりとりを行わない気体の状態変化を断熱変化と呼ぶ。その際、圧力Pと体積Vの間には、気体の種類に依存する指数b ()を用いて、次の関係が成り立つことが知られている。
いま、図1(b)のように、ピストンを原点OからA室側へ距離だけゆっくり移動させた後、静かに解放すると、ピストンは単振動を始めた。ピストンの運動について述べた以下の文章中の空白を適当な数字あるいは式で埋めよ。ただし、解答に用いることができる文字は、SMbxdである。
ピストンが任意の変位のときの
A室の体積をxを用いて表すと、 (1) となり、このときのA室の圧力は (2) と表される。一般に、変数1に比べて十分小さいとき、の近似式が成り立つとこが知られている。いま、初期状態からの体積変化量がに比べて十分小さいことを考慮すると、(2) (3) のように近似することができる。この近似のもとに、B室の圧力は (4) となる。これら2つの圧力を用い、ピストンの加速度をとして運動方程式を立てると、 (5) となる。得られた運動方程式から、ピストンが角振動数 (6) の単振動を行い、周期 (7) であることがわかる。また、ピストンは、x (8) のときに最大の速さ (9) になる。

2 次に、ピストンをA室側へ大きく移動させ、A室の体積をにした。
(1) ピストンを移動した後のA室およびB室の圧力および温度を求めよ。
再び、ピストンを原点Oで静止した状態に戻し、B室に設置されているヒーターに通電することにより、B室内の気体を一様に加熱した。加熱の進行に伴いピストンはゆっくりとA室側へ移動し、A室の体積がちょうどになった時点で加熱を止めた。
(2) 加熱後のA室およびB室の圧力および温度を求めよ。
(3) ヒーターからB室に投入された熱量、ならびにピストンを通じてB室の気体がした仕事を求めよ。ただし、必要であれば気体の熱容量を用いよ。

3 A室内は単原子分子の理想気体のまま、B室内を1モルの二原子分子からなる理想気体に置き換えた。B室内の気体を置き換えたほかは、問1とすべて同じ条件のもとで微小振動させた。次の問いに答えよ。なお、単原子分子および二原子分子からなる理想気体の指数bは、それぞれ、である。
(1) A室およびB室の圧力と体積の関係を表した図2のグラフの中から、最も適当なものを1つ選べ。
(2) ピストンの振動の様子を表した図3のグラフの中から、最も適切なものを1つ選べ。ただし、図3中のは周期を表し、このうちは問1(7)の周期を表す。


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解答 空気バネによる単振動の問題です。

1 A室、B室の気体は外部とのやりとりをしないので、単振動している間の気体の変化は断熱変化です。
(1) ピストンがだけ正方向(A)に移動すると、A室の体積は、から減少して、となります。
......[]
(2) このときのA室の圧力として、A室の圧力体積は、と変化するので、問題文の関係式(ポアッソンの関係式)(bは比熱比です)より、
 ・・・@

......[
]
(3)
初期状態からの体積変化量に比べて十分小さいので、より、
......[]
(4) このときのB室の圧力として、B室の圧力体積は、と変化するので、@式の右辺のマイナスをプラスに変えた式が成立し、では、(3)の結果のの前のプラスがマイナスに変わり、
......[]
(5) ピストンに働くで、ピストンの運動方程式
(3)(4)の結果を用いて、
 ・・・A
......[]
(6) Aより、
これは、角振動数単振動を表します。
......[]
(7) 周期は、
......[]
(8) A式は、単振動の振動中心であることを意味し、においてピストンは最大の速さになります。
0 ......[]
(9) 振動中心であって、最初にでピストンを静かに離したところから、単振動の振幅dです。最大の速さは、単振動の公式より、
......[]

2(1) A室、B室の最初の状態での状態方程式 ・・・B (は気体定数)
ピストン移動後のA室,B室の圧力絶対温度とします。ピストン移動後について、
A室の状態方程式 ・・・C
B室の状態方程式 ・・・D
C÷Bより、 ・・・E
D÷Bより、 ・・・F

外力をかけて(つまり、ピストンにかかるについて、つり合いは成立していない)「ピストンをA室側へ大きく移動させ」という問題文の記述から、この間の変化は断熱変化と考えられます。断熱変化の関係式:より、
......[]
E,Fより、
......[]
(2) 加熱後のA室,B室の圧力絶対温度とします。C、Dはそのまま成立し、E,Fも同じです。また、A室については、断熱変化のまま(B室はを加えるので断熱変化ではありません)なので、
......[]
ですが、今度は、ピストンに外力を加えるわけではないので、ピストンに働く力のつり合いが成立し、

......[]
(3) A室については断熱変化なので、熱力学第1法則より、A室内の気体がした仕事内部エネルギーの変化を温度変化として、

B
室の気体がした仕事は、
......[]
B室の内部エネルギーの変化は、
熱力学第1法則より、ヒーターからB室に投入された熱量は、
  ......[]
注.熱容量Cの単位に注意してください。定積モル比熱の単位はで、nモルの気体の内部エネルギーです。ここでは、であり、A室、B室の気体は1モルなのでであり、として考えます。
もちろん、単原子分子理想気体なので、としても
OKですが、文字Cの使用については、問3の問題文中で比熱比の値を指定しているので、の値を未知だとしても解答できるように、出題者が配慮したものと思われます。

3 問1と同じ条件なので、微小振動している間、A室,B室とも、気体は断熱変化します。A室を単原子分子、B室を二原子分子とするので、A式のbを、A室についてはB室についてはにする必要があり、Aは、
 ・・・G
角振動数周期 ・・・H
A室、B室ともに単原子分子理想気体であれば、Aでとし、
角振動数周期 ・・・I
(1) A室、B室それぞれについて、圧力P体積Vとして、断熱変化の関係式:より、
A室: ・・・J
B室: ・・・K
J,Kとも、のときですが、
のとき、
A室ではB室ではより、A室の方が圧力が大きくなります。
のとき、
A室ではB室ではより、B室の方が圧力が大きくなります。
こうなっているグラフは、
() ......[]
(2) H,Iを見ると、より、Hの周期の方がIの周期よりも長いことがわかります。また、Gより、片方を二原子分子に変えても、振動中心のまま変わりません。こうなっているグラフは、() ......[]


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