京都大学
2003
年前期物理入試問題
[1]
次の文を読んで、
に適した式をそれぞれの解答欄に記入せよ。なお、
は、すでに
で与えられたものと同じものを表す。また、下線部に関して、単振動が生じる理由を解答欄
(A)
に記入せよ。
重力加速度の
2
倍まで加速が可能なエレベーターを想定する。以下では、すべて、エレベーターに固定された観測者から見た運動を考え、空気による抵抗は無視する。なお、必要であれば
を利用せよ。
エレベーターが静止している状態で、床に固定された質量の無視できるばね
(
ばね定数
k
)
の上に、厚さの無視できる質量
M
の台
P
を固定し、その上に大きさの無視できる質量
m
の物体
Q
を静かに置いたとき、台
P
は図
1
のように天井から
H
の距離で静止した。重力加速度を
g
としたとき、ばねは自然長から
イ
縮んでいる。
この状態でエレベーターが図
2
のように上昇を始めたとき、台
P
と物体
Q
は自然長から
ロ
縮んだ位置を中心として単振動を始めた。この直後、観測者は台
P
と物体
Q
をつかんで、つりあいの位置すなわち単振動の中心位置に
P
と
Q
を静止させた。
次に、図
2
で速度が一定になる時刻
の後の
P
と
Q
の運動について考える。時刻
の後、
P
と
Q
は再び運動を始める。運動開始後の鉛直上向きの加速度を
β
,
PQ
間に働く垂直抗力を
N
とする。ばねが自然長から
x
縮んでいるとき、
P
の運動方程式は
ハ
,
Q
の運動方程式は
ニ
となる。
β
を消去することで、垂直抗力は
ホ
となり、
の場合には
Q
が台
P
から離れ、その位置は、ばねの自然長位置である。そのときの
Q
の速度
(
鉛直上向きを正とする
)
は、エネルギー保存則
×
ロ
=
ヘ
から
となる。台
P
から離れた後、
Q
がエレベーターの天井に衝突しない条件は
H
>
ト
である。
この条件を満たすとき、
P
と
Q
が離れた後のそれぞれの運動の概略は図
3
のようになる。
Q
の台
P
と衝突するまでの時間とその位置に関し、
,
の場合について次のように考察した。
台
P
は
Q
を放出した後、周期
チ
の単振動となり、その振動の中心はばねの自然長先端から
リ
下がった位置にある。また、台
P
はばねの自然長からさらに
ヌ
伸びた位置で最高点に達する。このことから、台
P
が
Q
を放出した位置から再びその位置に戻って来るのに要する時間は
ル
である。一方、
Q
が台
P
から離れた瞬間の位置から再びその位置に戻ってくるのに要する時間は
ヲ
であることから、
Q
が台
P
に到達するのはこれ以降となる。
[
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]
[2]
次の文をよく読んで、
に適した式または数値を、それぞれの解答欄に記入せよ。なお、
,
を満たす任意の微小量
x
,
y
に対して
を用いてよい。
(1)
圧力
P
の気体の体積
V
が微小体積
だけ増加したとき、気体がされた仕事は
い
である。このとき気体の内部エネルギーが
だけ増加すると同時に熱量
Q
が気体に流れ込む。この熱量
Q
は熱力学第
1
法則を考慮すると
ろ
と表される。
(2)
モル比熱とは
1mol
の気体の温度を
1K
上昇させるのに必要な熱量である。圧力
P
,体積
V
,温度
T
の
1mol
の理想気体は状態方程式
を満たす。ただし、
R
は気体定数である。この気体を圧力を一定に保った状態で、体積、温度をそれぞれ
,
だけ変化させると、
=
は
という関係式が成り立つ。したがって、定圧モル比熱
と定積モル比熱
の差は
=
に
となる。
(3)
1mol
の理想気体の圧力、体積、温度をそれぞれ
P
,
V
,
T
から
,
,
に断熱的に微小変化させてみる。このとき
を比熱比
を用いて表すと
ほ
である。次に状態方程式を考慮して、
を
P
,
,
T
,
を用いて表すと
へ
となるので、
=
と
と書ける。
(4)
今までの議論を踏まえて、地表近くの空気の温度低下率について考えてみよう。地表から
10km
位までの空気の層は対流圏と呼ばれ、空気の塊が重力加速度
g
を受けながらゆっくりと上昇または下降する。今、空気を断熱変化をする理想気体とみなし上昇している空気の塊に着目する。密度
ρ
の空気の塊が高さ
だけ上昇すると、圧力は
だけ変化する。また
ρ
は
1mol
あたりの空気の質量
M
および、
P
,
T
,
R
を用いて
ち
と表されるので、圧力の変化率は
=
り
という関係を満たす。以上のことから、温度変化率を
M
,
g
,
γ
,
R
を用いて表すと、
=
ぬ
となる。
[
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]
[3]
次の文を読んで、文中の
に適した式または数値を、それぞれの解答欄に記入せよ。
はすでに
で与えられたものと同じものを表す。ただし、プランク定数を
h
,光速を
c
とする。
振動数
ν
の光子のエネルギーは
ア
,運動量は
イ
である。真空中で、振動数
ν
のガンマ線の光子が、原点に静止している質量
m
の粒子
1
によって散乱されて、光子の振動数は
になり、粒子
1
は一定の速度
u
で動き始めた。このとき、粒子
1
の内部エネルギーに変化はなかった。速度
u
の方向を
x
軸の正の方向に取ると、図
1
に示すように、入射光子の方向と散乱光子の方向のなす角度は
であり、入射光子の方向と粒子
1
の速度
u
のなす角度は
φ
であった。ここで
φ
は
より少し小さい角度とする。入射光子の方向の運動量の保存則から
イ
=
ウ
となる。また、散乱光子の方向の運動量の保存則からも同様の式が得られ、エネルギー保存則も成り立つ。その結果、粒子
1
の速度
u
,入射光子の振動数
ν
と散乱光子の振動数
は、
φ
,
m
,
c
と
h
を用いて表すと、それぞれ、
u
=
エ
,
ν
=
オ
,
=
カ
と書けることがわかる。
以下の問題で粒子
1
の速度が必要になったときは
u
のままでよい。図
1
に示すように
に質量
m
の粒子
2
が静止していた。時刻
に粒子
1
は粒子
2
と衝突して、両粒子は合体して動き出した。合体した粒子を粒子
3
と呼ぶ。粒子
3
の速度は粒子
1
の速度
u
を使って表すと
キ
であり、衝突の結果、内部エネルギー
ク
が発生した。粒子
3
は時刻
から一定速度で動きながら、この内部エネルギーを使って、赤外線を大量に四方八方に連続的に放射し始めた。この放射は時刻
には完全に停止した。図
1
に示すように、地点
で静止していた観測者
A
が、粒子
3
からの放射を計測していた。時刻
と時刻
に粒子
3
から
A
に向けて放射された赤外線は、それぞれ時刻
ケ
と時刻
コ
に
A
に達する。したがって、観測者
A
が粒子
3
からの赤外線の放射を受光していた時間間隔は
サ
となる。
なお、赤外線は電磁波の一種であり、放射体の速度によらず、真空中を光速
c
で進む。また粒子
3
は、原点と観測者
A
の間にあるとする。
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