東工大物理'02年前期[2]

 図のように液体の入った円筒状の容器の中に、熱をよく通すシリンダーがさかさまに浮いている。容器とシリンダーにはそれぞれ、気密性を保ちながら滑らかに動き質量が無視できるピストンがついている。シリンダーには質量が無視できるn[mol]の理想気体が入っており、シリンダーのピストンと容器の底は質量が無視できるバネでつながれている。容器とシリンダーの断面積はそれぞれS,液体の密度はρ ,外気圧は[Pa],気体定数はR ,重力加速度はgとする。シリンダーの軸は常に鉛直方向に保たれており、容器とシリンダーのピストンの厚さおよびシリンダーの底の厚さは無視できるものとする。

[A] シリンダーは液面下d[m]のところに静止しており、シリンダーの底からピストンまではh[m]であり、バネは自然長であった。このとき、
(a) シリンダー内の気体の圧力P [Pa]および温度T [K]を求めよ。
(b) シリンダーの質量M [kg]を求めよ。

[B] 液体と気体の温度をともにT [K]から[K]に上昇させ、容器のピストンの上に質量W[kg]のおもりをのせると、シリンダーは静止し、バネはふたたび自然長に戻った。液体の密度および外気圧は変化しないものとして、次の問に答えよ。
(c) シリンダー内の気体の体積および圧力[Pa]を求めよ。
(d) おもりの質量W[kg]を求めよ。

[C] [A]の状況でバネを取りはずす。このとき次の問いに答えよ。ただし、液体と気体の温度は変化しないものとする。
(e) シリンダーを[A]の位置から微小な距離x[m]上昇させると、シリンダーのピストンも[A]の位置からy[m]上昇した。xyで表せ。ただし、のときのシリンダー内の気体の圧力をP[Pa]とし、また、Sに比べて十分大きく容器のピストンの位置の変化は無視できるものとする。
(f) このとき、シリンダーに働く合力F[N]を上向きを正として求め、その結果を用いてシリンダーが上下方向の変位に対して不安定である理由を40字以内で述べよ。


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解答 [C]は難問です。シリンダーに働く力のつり合いを考えてしまうとアウトです。シリンダーが動いて力のつり合いが成立するくらいなら(f)で不安定になるはずがない、ということに気づけるとよいのですが。

[A](a) シリンダーのピストンの高さから上にあって、シリンダーの外側の部分をDとし、D内の液体に働くを考えます。この部分D底面積です。
まず、大気が鉛直下向きに押すD体積[]D内の液体の質量[kg]D内の液体に働く重力が鉛直下向きに[N],シリンダーのピストンの高さのところでの液体の力を[Pa]として、D内の液体を下から鉛直上向きに押す[N]
これらの力のつり合いから、
・・・@

シリンダーのピストンに働く
は、シリンダー内の気体が鉛直下向きに押す[N],ピストンの下側の液体がピストンを鉛直上向きに押す[N],バネは自然長なのでを及ぼさず、力のつり合いは、
[Pa] ......[] ・・・A

シリンダー内の気体の
状態方程式
Aより、
[K] ......[]

(b) シリンダーの底面(さかさまになっているシリンダーの上側)から上側の部分の液体に働くは、大気が鉛直下向きに押す[N],この部分の液体に働く重力が鉛直下向きに[N],シリンダー内の気体が鉛直上向きに押す[N],シリンダーに働く重力が鉛直下向きに[N]
これらの力のつり合いより、
・・・B

A,Bより、
[kg] ......[]
(
シリンダーに働く重力浮力のつり合い:を考えればもっと容易です)

[B](c) 容器のピストンの上におもりを乗せた後、シリンダーの底面が液面下[m]のところにあって、シリンダーの底面からピストンまでは[m]だったとします。この場合においてもバネは自然長だったので、です。
シリンダーのピストンの高さのところでの液体の圧力[Pa],シリンダーの底面の高さのところでの液体の圧力[Pa]だとすると、シリンダーのピストンの高さとシリンダー底面の高さの間にあって、シリンダーの外側の部分にある液体に働くは、この部分の液体を上から下向きに押す[N],この部分の液体に働く重力が鉛直下向きに[N],この部分の液体を下から鉛直上向きに押す[N]
これらの力のつり合いより、


シリンダーのピストンに働く力のつり合いより、
・・・C

シリンダーの底面に働く
は、ここから上の液体が鉛直下向きに押す[N],シリンダー内の気体が鉛直上向きに押す[N],シリンダーに働く重力が鉛直下向きに[N]
これらの力のつり合いより、
Cを代入すると、
であって、シリンダーの位置は[A]と同じです。
よって、シリンダー内の気体の
体積は、[] ......[]
((b)
と同様に、シリンダーに働く重力浮力のつり合いを考えれば明らかです)

シリンダー内の気体について、状態方程式:
[Pa] ......[] ・・・D

(d) シリンダーの底面の高さのところから上側の液体とシリンダーに働くを考えます。大気が鉛直下向きに押す[N],おもりに働く重力が鉛直下向きに[N],この部分の液体に働く重力が鉛直下向きに[N],シリンダー外部の液体が、この部分の液体を鉛直上向きに押す[N],シリンダー内の気体が鉛直上向きに押す[N],シリンダーに働く重力[N]
これらの力のつり合いより、
・・・E
Cとより,これをEに代入すると、
整理して、
Dを代入しgで割ると、
[kg] ......[]

[C](e) この状況では、シリンダーに外力をかけて上に引き上げているので、シリンダーに働く力のつり合いを考えることはできません
シリンダーをx[m]上昇させたとき、シリンダー内の気体が存在する部分の高さは、[m]です。シリンダー内の気体の体積[]
このときのシリンダー内の気体の圧力として、等温変化なのでボイルの法則より、
・・・F
シリンダーのピストンの高さから上側にあって、シリンダーの外側の部分にある液体に着目します。この部分の液体は静止しているので、力のつり合いが成立します。この部分の液体に働くは、大気が鉛直下向きに押す[N],この部分の液体に働く重力が鉛直下向きに[N],この部分の下側から鉛直上向きに受ける[N]
これらの力のつり合いより、

Aより、 ・・・G
Fに代入すると、
展開して、
xy微小距離なので、を無視すると、
......[] ・・・H

(f) シリンダーに働くは、シリンダー内の気体が上に押し上げる[N],シリンダーに働く鉛直下向きの重力[N],シリンダー上部の液体がシリンダーを鉛直下向きに押すは、大気圧と液体に働く重力を考えて、[N]
これらの合力Fは、G,Aを用いて、



 (Hより、)
これより、シリンダーには、変位xと同じ方向に、変位xに比例するが働きます。
変位と逆向きに変位に比例するが働けば単振動しますが、変位と同じ方向にが働くときには単振動にはなりません。
不安定である理由:変位と同じ向きに変位に比例する大きさの力が働くから。
(26) ......[]


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