東工大物理'08年前期[4]

図のように、水平面上に質量mの物体Aを置き、ばね定数kのばねをつなぐ。ばねが自然長となる物体Aの位置を原点Oとし、水平方向にx軸をとり、右向きを正の向きとする。原点Oから点P (位置)までの区間は摩擦のある領域であり、それ以外の領域は摩擦がないものとする。点Pの右側に質量mの物体Bを置く。物体Aおよび物体BOP間における静止摩擦係数をμ,動摩擦係数をとする。重力加速度をgとして以下の問いに答えよ。ただし、物体ABの大きさは無視できるものとする。
[A] はじめに物体Aを原点Oに静止させておく。物体Bに原点Oに向かう速度を与え、摩擦のある領域を通過させたところ、物体BAに衝突し、その後1つの物体ABとなって運動した。はじめに物体Bに与えた運動エネルギーをEとする。
(a) 衝突直前の物体Bの運動エネルギーEmglを用いて表せ。
(b) 衝突直後の物体ABの運動エネルギーを、Emglを用いて表せ。ただし物体BAの衝突は瞬間的に起こり、その際、摩擦力の影響は無視できるものとする。

設問[A]において、物体Bにはじめに与える運動エネルギーEを変化させて、物体ABの運動を調べる。ただし以下の問では、μlkmgおよびを満たすものとする。

[B] ある運動エネルギーEをはじめに物体Bに与えたところ、物体ABは、衝突して一体となった後、再び原点Oに戻り、OP間のある位置xで速度が0になった。
(c) 速度が0になる位置xを、Eklを用いて表せ。
(d) 速度が0になった後、一体となった物体ABはどのような運動をするか、理由をつけて答えよ。

[C] 設問[B]で与えた運動エネルギーより大きい運動エネルギーEをはじめに物体Bに与えたところ、一体となった物体ABPの右側に飛び出し、Pから再び摩擦のある領域に入った後、OP間のある位置xで速度0になった。
(e) 位置xを、Eklで表せ。

[D] 問い(e)の答x0とするような、物体Bに与える運動エネルギーEとする。
(f) 物体A(一体となった後は物体AB)が最終的に静止する位置xを、Eの関数とみなし、における関数のグラフの概略を描け。


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解答 東工大の面目躍如の問題です。簡単な設定なのに、どうやって、こういう面白い問題を思いつくのか、東工大の先生には敬服してしまいます。

[A](a) OP間で物体Bに働く摩擦力が物体Bにする仕事は、
......[] (エネルギーの原理を参照)
(b) 衝突直前のB速度v,衝突直後のAB速度として、運動量保存より、
 (衝突・合体・分裂の問題を参照)
衝突直前のBエネルギーについて、
衝突直後の
ABエネルギーについて、
......[]

[B] 一体となったABがばねを押し縮めて左端まで行ったのち、ばねの弾性力によって、右に動く向きを変え、原点Oに戻るまでの間、AB力学的エネルギーを奪うような仕事は存在せず、原点Oに戻ってきたときの力学的エネルギーは、より、
 ・・・@
のままです(こうなるためには、より、でなければなりません)
これ以後は、
摩擦力が負の仕事を物体ABにします。
(c) AB速度0になったということは、AB運動エネルギー0になったということです。このときに、ばねはx伸びているので、ABには、弾性力による位置エネルギーがあり、AB力学的エネルギーです。AB力学的エネルギーはもともと持っていた摩擦力のした仕事の和なので、,つまり、
@を用いて、
ここで、より、複号はプラスの方をとります。
......[]
ここでは、,つまり、より、
 ・・・A
となります。

(d) ばねの弾性力最大静止摩擦力を上回れば滑り出しますが、なので、より、ABは静止したままになります(摩擦力を参照)
ABは静止を続ける。理由:弾性力が最大静止摩擦力よりも小さいから。 ......[]

[C] ABPの右側に飛び出した、ということは、Aより、だったということです。
ABOからPに移動する間に、摩擦力ABにする仕事は、です。
ABPの右側に飛び出した瞬間、ABは、という力学的エネルギーを持っています。右端まで行った後にPまで戻ってきたときにも、この力学的エネルギーを持っています。
(e) OP間の位置x速度0となり、運動エネルギー0になったときに、AB力学的エネルギーは、ばねの弾性力位置エネルギーのみとなります。Pから位置xまでに摩擦力が、だけの仕事ABにしているので、AB力学的エネルギーは、
となります。整理して、
@を用いて、
より、根号部分はよりも大きく、より、複号はマイナスの方をとります。
......[] ・・・B
より、となってしまうのですが、これは、Pの右側に飛び出して、ばねが思い切り伸びてしまうと、ばねの弾性力によって引き戻され、Pに戻ってきたときに勢いがつき過ぎていて(運動エネルギーが大き過ぎて)の範囲では止まりきれない、ということを意味しています。

[D] Bでとすると、となります。
(f) (i) の場合、物体BOPの途中で止まってしまうので、Aに静止したままになります。
(ii) の場合、(c)の結果より、ABは、で静止します。
(iii) の場合、(e)の結果より、ABは、で静止します。
よって、グラフは右図太線のようになります。


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