東工大物理'12年前期[1]
幅の無視できる円弧型のレールABC(半径R,長さ
)があり、円弧を含む面と床が垂直になるよう置かれている。レールの中央Bは常に床に固定されており、Bを通る鉛直線OBを軸としてレールは回転することができる。大きさの無視できる物体(質量M)は、レール上を運動するとき、レールに束縛されながらなめらかに運動し、両端(A,C)でのみレールから離れることができる。
物体が円弧型レール上を運動するとき、円弧の中心Oから見て、物体がOBとなす角をθ とする。重力加速度の大きさをgとし、以下の問いに答えよ。

[A] レールが回転していないとき、質量Mの物体をAに乗せ、静かに離したところ、物体はレール上を図1のように運動し始めた。
(a) 物体が角θ (
)の位置を運動しているとき、物体の速さ、レールから受ける垂直抗力を求めよ。 (b) 物体がレール上を運動し、Bの位置に到達したとき、レール上で静止していた大きさの無視できる物体(質量m)と衝突した。衝突後、質量mの物体はレール上をなめらかに運動し、再び衝突することなく、レールの端Cから離れた。2つの物体間の反発係数がe (
)であるとき、この運動が実現するためのmの条件を求めよ。
[B] OBを軸にして、円弧型のレールを図2のように回転させる。このとき、レール上の物体(質量M)はレールとともに回転運動する。
(c) ある角速度ω でレールが回転し、角θ (
)の位置で物体が等速円運動している場合について考える。この運動を、回転しているレール上の観測者から見ると、物体に働く力は図3のようにつり合い、物体は静止して見える。この観測者から見た物体に働く力(図3:ア,イ,ウ)の名称を書け。また、この運動は角速度ω が
の条件を満たすとき実現する。このとき
,
を求めよ。(d) 問(c)において、レールの角速度を
(
)に固定する。このとき、回転しているレール上の観測者から見ると、角
の位置で物体に働く力はつり合い、物体は静止して見える。次に、物体をつり合いの位置から少し動かし離したところ、物体はレール上を運動し始めた。円弧型レールを含む平面内で物体に働く力は、図3の3種類である。物体が角θ (
)の位置で運動しているとき、物体に働くレールに沿った方向の力の大きさを、重力加速度gを用いずに表せ。 (e) 問(d)において、角
からの変位
(
)が十分に小さい場合について考える。このとき、物体に働くレールに沿った方向の力は、つり合いの位置からの距離に比例し、その方向は常につり合いの位置を向いているため、物体は単振動をする。この単振動の周期を重力加速度gを用いずに表せ。 ただし、
が十分小さいとき、
の項は無視することができ、必要なら次の式を用いよ。
(f) 問(c)の状態から、レールの角速度ω をゆっくりと増加させた。この過程において角速度の変化は十分小さいため、短い時間における物体の運動は角速度ω の等速円運動をみなすことができる。角速度が
に達したとき、物体はレールの端Aから離れた。このとき、レールを真上から見ると、床面で定義されているx軸と、図4のように重なって見えた。その後、レールから離れた物体はしばらくして床に落下し、レールは角速度
を保ったまま回転した。物体が落下したとき、物体とレールを真上から見ると、図5のように見えた。
解答 地球上で北半球では、低気圧に吹き込む風は反時計回りに回るような渦を描きます。地球上で見て「コリオリの力」と呼ばれる慣性力が、速度に対して右向きに働くためです(南半球では逆になります)。北半球の状況をモデル化した(f)で、この発生原因を考察していますが、「コリオリの力」は高校範囲外であるため、空所補充形式の出題になったと思われます(もちろん、解答に知識は不要です)。
質量Mの物体をM,質量mの物体をmと呼ぶことにします。
[A](a) Aにいるとき、物体Mの床からの高さは、
です。物体Mのエネルギーは、位置エネルギー
のみです。 物体Mが角θ の位置に来たとき、物体Mの床からの高さは
で、物体Mの速さをvとして、物体Mは運動エネルギー
と位置エネルギー
を持っています。
両地点での力学的エネルギー保存より、 ∴
......[答] ・・・@
角θ の位置に来たときの物体Mの法線方向の運動方程式は、物体Mがレールから受ける垂直抗力をNとして、 @を代入して、
......[答]
(b) 衝突直前の物体Mの速さは、@で
として、
・・・A Bを代入して、
∴
物体mのBでのエネルギーは、運動エネルギー
のみです。物体mのCでの速さを
として、物体mはCにおいて運動エネルギー
と位置エネルギー
を持っています。BとCでの力学的エネルギー保存より、 物体mがCにおいてレールから離れる条件は、Cにおいても運動エネルギーを有すること、つまり、
で、 ∴
Aを代入して、 ∴
∴
......[答]
[B](c) (ア) 垂直抗力 (イ) 遠心力 (ウ) 重力 ......[答]
垂直抗力をNとします。重力は
,物体の回転半径は
で、物体に働く遠心力は
,これらの力のつり合いは、
鉛直方向:
,水平方向:
,
∴
・・・C
より
∴
,
よって、
,
......[答]
(d) Cは、
となります。これより、
です。 重力の接線方向成分は接線に沿って下向きに
,遠心力の接線方向成分は接線に沿って上向きに
,接線方向に働く力の大きさは、 
......[答]
(e) 問題文の近似を行うと、
物体の変位を
,物体の加速度をaとして、運動方程式は、 ∴
これは、角振動数
の単振動を表します。単振動の周期Tは、
......[答]
(f) 物体は、レールから離れた後、回転運動の接線方向(x軸に垂直な方向)に等速度運動します。物体に働く力は重力のみです。物体に働く力は、x軸の正の向きに0,鉛直下向きに
です。 @ 0 A
......[答]物体の鉛直方向の運動は自由落下と同じです。床に落下するまでの時間をt として、レールから離れたとき高さ
だったので、 ∴
B
......[答]物体Aは、レールから離れる直前、半径
,角速度
の等速円運動をしていました。物体Aの速さは
です。x軸正方向に等速度運動するときの速さも
です。落下地点をP,Pからx軸に下ろした垂線をPHとします。時間
進むので、落下地点とx軸との距離PHは、 Bとの距離OBは、
C
......[答] D
......[答]時間
の間のレールの回転角
は、角速度
で回っているので、 よって、
E
......[答]
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