東大物理'02年前期[1]
長さLの不透明な細いパイプの中に、質量mの小球1と質量
の小球2が埋め込まれている。パイプは直線状で曲がらず、その口径、及び小球以外の部分の質量は無視できるほど小さい。また小球は質点とみなしてよいとし、重力加速度をgとする。これらの小球の位置を調べるために次の二つの実験を行った。
T まず、図1-1に示したように、パイプの両端A,Bを支点a,bで水平に支え、両方の支点を近づけるような力をゆっくりとかけていったところ、まずbがCの位置まで滑って止まり、その直後に今度はaが滑り出してDの位置で止まった。パイプと支点の間の静止摩擦係数、及び動摩擦係数をそれぞれμ,
(ただし
)と記すことにして、以下の問に答えよ。 (1) bがCで止まる直前に支点a,bにかかっているパイプに垂直な方向の力をそれぞれ
,
とする。このときのパイプに沿った方向の力のつり合いを表す式を書け。 (2) ACの長さを測定したところ
であった。パイプの重心が左端Aから図ってlの位置にあるとするとき、重心の周りの力のモーメントのつり合いを考えることにより、
をl,μ,
を用いて表せ。 (3) CDの長さを測定したところ
であった。摩擦係数の比
を
,
で表せ。 (4) 上記の測定から重心の位置lを求めることができる。lを
,
で表せ。 (5) さらに両方の支点を近づけるプロセスを続けると、どのような現象が起こり、最終的にどのような状態に行き着くか、理由も含めて簡単に述べよ。
U 次に、パイプの端Aに小さな穴を開け、図1-2のようにそこを支点として鉛直に立てた状態から静かにはなし、パイプを回転させた。パイプが
回転したときの端Bの速度の大きさを測ったところ、vであった。端Aから図った小球1,2の位置をそれぞれ
,
として以下の問に答えよ。(支点での摩擦および空気抵抗は無視できるものとする。) (1) vを
,
,g,Lを用いて表せ。 (2) vを実験Tで得られた重心の位置lの値を用いて表したところ、
解答 物差しの上に消しゴムでも置いて、2本のボールペンなどで支えながらボールペンに内向きに力をかけてみてください。この問題の実験を簡単に行うことができます。
おもりはどこに隠されているのか、探索を楽しませてくれる問題でもあります。
T(1) パイプは水平方向に動かず、支点が動く、ということに注意してください。パイプに水平方向に働く力は、aから受ける右向きの静止摩擦力とbから受ける左向きの動摩擦力
です。bがCで止まる直前に、パイプがaから受ける摩擦力は、aが滑り出す直前なので、最大静止摩擦力
です。この2力のつり合いより、
......[答] ・・・@
(2) bがCで止まる直前に、パイプに鉛直方向に働く力は、aから受ける垂直抗力
とbから受ける垂直抗力
です。重心とCとの距離は
です。
・・・A@,Aより、
∴
......[答] ・・・B
(3) aがDで止まる直前に、パイプが支点a,bから受ける垂直抗力を
,
とします。このとき、パイプに水平方向に働く力は、aから受ける右向きの動摩擦力
と、bから受ける左向きの最大静止摩擦力
です。この2力のつり合いより、
・・・C
重心とDとの距離は、
重心の周りの力のモーメントのつり合いより、
・・・DC,Dより、
分母を払うと、 整理してBを使うと、
∴
......[答] ・・・E
(4) EをBに代入すると、
∴
......[答]
(5) さらに実験を続けて、Bが滑り出してEで止まったとします。このとき、
とすると、 重心とEとの距離は、
(1),(2)と同様に考えて、パイプに働く水平方向の力のつり合いの式と、重心の周りの力のモーメントのつり合いの式を立てると、パイプがa,bから受ける垂直抗力を
,
として、
・・・F
この式は、
・・・Gと書き直すと、F,Gは、C,Dにおいて、aとbを入れ替え、
,
,
としたものです。計算をしなくても、
となることがわかります。つまり、2支点間の距離
,
,
,・・・ は、公比
の等比数列になっていて、
より、プロセスを何度も繰り返していくと、2支点間の距離は、0に近づいていきます。2支点は、必ず重心の両側にあるので、最終的に2支点が重心に重なります。
支点aと支点bが代わる代わる一方が滑って他方が止まるということを繰り返し、両支点間の距離は、公比
の等比数列となって小さくなり、
より、0に近づいていく。最終的に、両支点は重心に来る。 ......[答]
U(1) 小球1の位置エネルギーの変化は、
,小球2の位置エネルギーの変化は、
この和が、パイプが
回転したときの運動エネルギーになります。
パイプが
回転したときの、小球1と小球2の速さはそれぞれ、
,
です(円運動の公式
より、角速度をωとして、Bの速さは
,小球1,小球2の速さは
,
,なお、等速円運動を参照)。力学的エネルギー保存より、 整理して、
∴
......[答]
(2) 
両辺を2乗して整理すると、
・・・Hこれより、
これと、
をHに代入すると、 整理して、
∴ 
のとき
となって不適。
のとき、
∴
,
......[答]
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