とする。
T 容器内の気体を理想気体とみなして、以下の問に答えよ。
(1) 高さzにおける気体の圧力を
とする。
を
,TおよびRを用いて表せ。 (2) 図3−2のように、高さzの位置にある、厚さ
,断面積Sの気柱に注目する。ここで、高さz,
における気体の圧力はそれぞれ
,
である。また、気柱内の
の変化は十分小さく、気柱内の気体のモル数は
で与えられるものとする。この気柱にはたらく鉛直方向の力のつり合いを表す式を与えよ。 (3) 上の(1),(2)の結果から、関係式(*)の係数aをm,g,TおよびRを用いて表せ。
(4) 気体の温度が一様に13℃の場合に、単位体積あたりの気体のモル数cが0.10%減少するような高さの差
を求めよ。ただし、気体1モルあたりの質量は
,気体定数は
,重力加速度の大きさは
とする。 (5) 容器の底と上端での単位体積あたりの気体のモル数の差
をm,g,T,R,nおよびSを用いて表せ。
U 図3−3のように、軽くて変形しない小さな物体を容器内の気体の中に入れておいたところ、やがて高さ
の位置で静止した。物体の体積をv,質量をMとして、以下の問に答えよ。 (1) 高さ
における単位体積あたりの気体のモル数
をM,vおよびmを用いて表せ。 (2) 物体が高さ
(
)にあるとき、物体にはたらく力Fの大きさをM,g,a,および
を使って表し、また、その向きを答えよ。ただし、
は十分小さく、関係式(*)がなりたつものとしてよい。 [解答へ]
各問検討
[1](解答はこちら) この問題は、教科書が理解できていれば解答可能です。特別な知識や考え方などを知っている必要はありません。最近の物理の教科書は、色刷りで図表などをふんだんに盛り込み、説明文も理解しやすく工夫されていてよくできています(学習指導要領の混乱に伴うカリキュラム上のおかしな点はありますが)。特に、高校1,2年生は、教科書をしっかり読み込んでおくべきです。基礎事項がマスターできていないのに、力学的エネルギー保存の特殊な考え方(東大‘94年前期[1]など)をする問題に取り組んでも意味はないのです。この問題の出題者の意図はそういうところにあると思います。
この問題を解答するために必要な事項は、
系のエネルギーを奪うような外力がなければ力学的エネルギーは保存されるという事実、
等加速度運動の公式:
,
速度vと位置xの関係:
単振動の公式:
(または、ばね振り子の公式:
),
運動エネルギー:
これだけです。特殊な考え方をする部分はありません。ボリュームはたっぷりあるので、処理速度は問われますが、知識量を要求されているわけではありません。
東大物理が毎年すべての問題が基礎的な問題ばかり、というわけではありませんが、まずは、基礎固めのためにしっかりと教科書をよく読んでおいてください。
[2](解答はこちら) ネオンランプの電流−電圧特性の図が出てきたりするので、非直線抵抗のような難問か、と、感じるかも知れません。ですが、やってみると、問題文中のヒントに従って計算してゆけば何とかなります。ヒントなしだと厳しい問題でしょう。ただ、物理の問題としては計算が面倒でボリュームもあるので、どんどん計算を進めて行かないと時間が足りなくなります。
この問題も'08年前期[1]と同様に、特殊な技巧や物理的な考察をする必要はありません。コンデンサーの基本公式:
,
程度で充分に対応できます。昨年までと比べて、東大物理は、やや基本的な出題に方向転換したのでしょうか?昨年の'07年前期[3]が難問過ぎたことの反省があるのかも知れません。
特殊な状況設定に惑わされないようにすれば、教科書の内容をよく理解し、基本的な問題練習を積んでおくことにより、こうした問題に対処できるはずです。出題者の狙いもそうしたところにあると思われます。難問であれば、正答率も下がります。まずは、基礎をガッチリ固めておいて欲しい、という、東大のメッセージと受け止めましょう。
[3](解答はこちら) この問題が、ことしの3題の中では最も頭を使う問題です。とは言っても、T(1)〜(4)は基本問題です。Uも物体の運動が単振動であることを示すときによく出てくる形なので、穏当な問題だと思います。基礎がしっかりしている受験生には何でもなかったでしょう。
問題はT(5)です。[別解]に市販本などに出ている方法、階差数列風の考え方による解答も書いておきましたが、これを物理の試験中に思いつけるでしょうか?思いつける受験生は立派だと私は思いますが、この問題の正答率がどれくらいなのか、東大に聞いてみたいところです。
私は、こうした問題では、微積分を使ってしまう方が易しいと思います。
が出てくれば、
,
として、
・・・D が難なく得られます(これは変数分離型の微分方程式です)。右辺に
が出てくるので、普通は、この式を、逆関数の微分法の公式を用いて、
として積分し、
(C:積分定数) ∴
(
,
)
などとすると思いますが、これでは、
となってしまって、
が残ってしまいます。何か忘れている条件があるのです。私は、ここではじめて、容器内の気体の量がnモルである、という条件に気づきました。階差数列の和のような考え方が思いつけたとして、この条件に気づけるでしょうか?問題文にヒントが欲しい気がします。容器内の気体の量がnモルという条件は、
と、表されます。これで、Dの形のまま、Sをかけてzで積分すればよいだろう、ということになります。
もちろん、階差数列の和のように考えてきて、容器をz方向にN個に分けて、
とすれば同じことですが、'08前期[2]に親切な誘導がついているのと比べると、この問題は、ちょっと無理な気がします。多分、ほとんどの受験生はここをパスしてUに進んでしまっていると思うので、実質的な被害を受けた受験生はほとんどいなかったと思いますけれども。白状すると、私は、階差数列のような考え方を全く思いつきもしませんでした。
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