東大物理'09前期[1]検討

[1](解答はこちら) 本問は力学の総合問題で、単振動と等加速度運動に、分離、衝突、エネルギーがからんだ問題です。決して難しい問題とは言えないのですが、さりとて、物理を得意科目にしていない高校生にとっては、気が遠くなるような印象を受けてしまうかも知れません。
私が持っている物理Tの教科書は、「電気」から記述が始まっているのですが、物理の入試準備を始めるときには、「力学」から始めるべきです。物理の勉強を「電気」から始めるのは全くナンセンスです。物理学の基本を文科省のお役人さんの都合で歪めて良いわけがないのです。そして、まず最初に、本問のような力学の総合問題を解けるように努力するべきです。
本問は、グラフを描かせる部分など、全体を通して眺めると、いろいろな入試問題を解いた経験を要求していて、それなりのレベルなのですが、個々の部分を取り出すと、実は、基本レベルの寄せ集めでしかありません。決して高度な受験技巧を要求しているわけではないのです。
運動方程式を書いて単振動の周期を求めたり、垂直抗力を求めて分離する条件を考えたり、力学的エネルギー保存の式を立てたり、ということの一つ一つは、教科書の例題レベルの内容です。各学校で配布される物理の基礎問題集の練習問題を一題ずつ解いていくのと、ほとんど変わりはありません。引っかかる点があれば、物理T、物理Uの教科書の関連事項のところをまず熟読してください。「力学」の基礎固めをする間は参考書は不要です。高校生にとって物理を縁遠く感じさせてしまう原因は、教科書に書かれている基礎事項の習得が不足している点にあります。まずは、教科書で基礎知識をしっかり身につけてください。
本問は、同じ質量の物体が完全弾性衝突
(反発係数が1)をすると速度を交換する、従って、衝突の時点を境にして、2物体の運動は完全に対称になる、ということが全体的なストーリーの流れになっています。物理を得意とする受験生は、問題文を眺めただけで、運動の状況(従って、U(3)のグラフ)を頭の中にイメージすることができるだろうと思います。ですが、基礎的な勉強を積み重ねている間は、質量mの物体1と物体2が速度vで向かい合って進んで来て、衝突した後の速度を求めるとき、以下のように、運動量保存則の式と反発係数の式を連立するので構いません。
衝突後の物体
1,物体2の速度をuwとして、
運動量保存より、 ・・・@
反発係数の式: ・・・A
@より、
Aに代入して、

これで、物体
1と物体2の速度が衝突前後で入れ替わることがわかります。しかし、こうしたことは、いろいろと入試問題を解いてくると、覚えようとしなくても自然に記憶されて、問題文を読んだだけで、多分、こうなるんだろう、という経験的予測が立つようになってきます。こうなるまでは、忍耐して、教科書や基礎的問題集の反復練習を行ってください。ここが苦しくて物理離れを起こす高校生が多いのですが、逆に言うと、ここを乗り切れれば、物理は、入試科目の中で最もラクな科目です。最小の努力で最大の得点を稼ぐことのできる科目です。安易にもうけ話に乗って大事な貯金を巻き上げられてしまうお気の毒な高齢者のニュースをよく耳にしますが、安易なもうけ話に乗ってはいけない、ということはどういうことかと言うと、辛そうな道の向こうにこそ花咲き乱れる楽園がある、ということなのです。


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