東大物理'09年前期[2]

2のように、紙面内の上から下向き(x軸の正の向き)に重力(重力加速度の大きさg)がはたらき、紙面に垂直に裏から表の向きに一様な磁場(磁束密度の大きさB)が、EFGHの間の領域だけに加えられている。EFGHは水平である。抵抗R,質量mの一様な導線を一巻きにして作った高さa,幅bの長方形のコイルABCDを、磁場のある領域の上方から落下させる。その際、ABCDは紙面内にあり、BCx軸と平行となるように、常に姿勢を保つようにした。EFGHの距離はコイルの高さaに等しい。導線の太さはabに比べ十分小さく、EFbに比べ十分長いものとする。また、自己誘導や空気抵抗は無視し、地面との衝突は考えないものとする。
T 時刻に、ABEFの距離がhとなる位置から初速度0でコイルを落下させた。
(1) ABEFに到達する時刻と、その時のコイルの速さhを用いて表せ。
(2) ABGHに到達する時刻をとする。ある時刻t ()に、コイルが速さvで落下しているとする。このとき、コイルにはたらく合力(x軸の正の向きを正とする)vを用いて表せ。
(3) ABEFに到達する時のコイルの速さの値によって、時刻からの間にコイルが加速する場合と減速する場合がある。それぞれの場合における、の条件を記せ。
U 時刻からの間コイルが等速度で落下するように、時刻におけるコイルの位置をうまく調整してから、初速度0で落下させた。
(1) この場合の、時刻におけるABEFの距離と時間を求めよ。
(2) 時刻からの間に、コイルで消費される電力Pと熱として発生するエネルギーWを求めよ。
(3) DCGHに到達する時刻をとする。時間を求めよ。また、落下開始から、磁場のある領域を十分離脱するまでの、コイルの速さの時間変化を表すグラフを描け。グラフには、 (具体的な式は不要)と、それらの時刻における速さの式を記せ。


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解答 頻出パターンで難しくはありませんが、包括的にいろいろなことを問うているので、しっかり勉強してきた受験生でなければ正解できないでしょう。

T(1) コイルは、時間の間に距離hだけ自由落下するので、等加速度運動の公式より、

......[]
......[
]
(2) 時刻におけるABの位置をとします。
コイルに電流が流れるので、コイルの、磁場内に侵入している部分は磁場から力を受けます。
時刻tのときのABx座標をxとすると、コイルの囲む長方形のうち磁場内に侵入している部分の面積Sは、幅b,高さの長方形の面積として、
面積Sの部分を貫く磁束Φは、
コイルに発生する起電力Vは、電磁誘導の法則より、
 (マイナスはレンツの法則を表します)
フレミング右手の法則より、運動方向(x軸正方向)が親指の向き、磁場の方向が(コイル面の向こうからこっち向き)人差し指の向き、として、起電力の向きは中指の向き、つまり、BAの方向に電流を流す向きです。
コイルに流れる
電流の大きさIは、オームの法則により、
コイルの辺BA磁場が及ぼすの向きを調べます。フレミング左手の法則より、磁場の方向を人差し指の向き、電流の向き(BAの向き)を中指の向き、として、辺BA磁場が及ぼすの向きは親指の向き、つまり、x軸負方向になります。
長さ
bの辺BA磁場が及ぼすの大きさFは、
コイルの辺CBAD部分には、互いに逆向きで同じ大きさのが働くので打ち消し合います。
コイルに働く
合力は、x軸正方向に働く重力と、x軸負方向に働くFとの合力になり、
......[]
(3) の間にコイルが加速するのはのときで、減速するのはのときです。の符号はコイルが磁場中を通過している間には変わらず(例えば、コイルが加速してv→大のときでも、0となるだけです)ABEFに到達した時点()の符号で決まります。
従って、加速する条件は、においてより、
......[]
減速する条件は、においてより、
......[]

U の間にコイルが等速度で落下するように調整した、と、問題文が言っているのは、のときのコイルの位置を、,つまり、となるようにした、という意味です。
(1) のとき、においてでコイルの速度のままになります。従って、ABEFに到達してからGHに到達するまでの時間は、
......[]
(2) にコイルで消費される電力Pは、
......[]
熱として発生するエネルギーWは、
......[] (EFGHの間に失われる重力の位置エネルギーに相当します)
(3) でも、のときに辺ABに働いていたのと同じ(向きはやはりx軸負方向)磁場がコイルの辺DCに及ぼします。従って、の間もコイルは速度等速度運動を続けます。辺DCが磁場を抜けてしまうと、では、コイルは磁場からを受けなくなって自由落下に戻り、加速度g速度は増大を続けます。コイルの速さ時間変化を表すグラフは右図。


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