東大物理'09前期[3]検討

[3](解答はこちら) 2009年の東大物理の問題は、第1問と第2問が力学、電磁気の基本を見る問題、第3問が発展的な問題となっています。発展的とは言っても、数学の第6とは異なり、教科書の内容に即して物理的な思考能力を見るようになっていて、決して無理な問題ではありません。ふだんから自然現象に関心を持って、どうしてこうなるんだろう、と、考えることの好きな物理少年であれば、楽しく考えられるような問題に工夫されています。問題を解くに当たって必要となる基礎事項は、力のつり合い、比熱の式、くらいなものです。気体分野の問題なのに状態方程式でさえ必要となりません。TからXまでは、Yを考えるためのヒントになっていて、考え込むような部分はありません。自然にYに進むようにうまく誘導されています。
さて、Yですが、こうした問題では、あくまで、問題文の内容に即して考える、という点に注意しましょう。仮に、独学でより進んだ知識を持っていたとしても、その知識を使うと、問題文が想定している条件と異なってしまうかも知れないからです。また、自然現象の事実と仮に異なるとしても、自然現象に合わせて解答するのではなく、問題文の条件に即した結論を答えるようにしてください。本問であれば、問題文に与えられている蒸気圧曲線を用いて、「水は少しずつ水蒸気に変化していく」という問題文の記述に合わせて考える必要があります。
また、問題文に想定されている条件にかなり無理な部分があっても、その条件設定を問題視してはいけません。入試問題で条件設定を変えると、多くの場合、高校の範囲を超えるような数学の技巧が必要になってしまうのです。問題文が要求しているレベルに合わせて解答するようにします。
なお、解答には書いてありませんが、温度がからまで変わるときの水の体積変化を考慮すると、この間にもピストンは静止せずに下がり続けるのではないか、と、お考えの方もいると思います。ですが、水の熱膨張係数はではと非常に小さく、温度が変化しても体積はほぼ一定です。ちなみに、水はにおいて熱膨張係数が
0となり、の範囲の温度tにおいては、 熱膨張係数は負です。従って、風呂の湯を温めているときには、水中から水面に上昇するに従って水温が高くなりますが、氷が張っている池では氷の張っている表面のところが最も温度が低く、水中から上昇するに従って水温が低くなります。この辺は、インターネット上でも議論があるところで、興味を持たれた方は、「水 熱膨張係数」で検索してみてください。東大の出題者がからまでという温度を選んでいるのも、インターネット上の議論を参考にしたのではないか、という気がします。今後は、大学受験する場合は、ネット上での議論にも目を光らせる必要がある、ということです。

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