東大物理'10年前期[3]検討

[3](解答はこちら) 最近、ドップラー効果の入試問題は1次元的なものばかりで、斜め方向のドップラー効果を扱う問題を見かけませんでした。そこで2010年の入試では、難関大学で出題するところがあるだろう、と、予測していたら、案の定、東大が出題してきました。本問は基本的な問題なので、初めて取り組む、という受験生でも、それほどまごつくことはなかったと思います。ドップラー効果というよりも、むしろ本問の最後の近似の仕方を手間取った受験生の方が多かったことでしょう。
過去問をよく研究している受験生に申し上げたいことは、過去に出題されているから準備をしておくべき、というのではなく、過去に出題されていないテーマの方に注意をして欲しい、そして、物理の教科書で採り上げられている内容については、過去に出題されていないから無視、ということをせずに、あまねく勉強しておくべきだ、ということです。また、教科書・参考書の記述の暗記に走るのではなく、本問解答のように、振動の様子を絵に描いて、実際の振動を目で見ているかのように考えるようにしてください。試験場で、覚えてきたことを再現するのではなく、問題文に記述されている状況に物理法則を適用して、試験会場でこそ、研究者の気分を味わいながら、物理を実践してみて頂きたいのです。
さて、本問は、ことし南アフリカでサッカーのワールド・カップが開催されるので、サッカー場をネタにしたのかも知れませんが、理系の受験生も新聞記事などに充分注意しておくべきだ、ということを申し上げたいと思います。
斜め方向のドップラー効果の問題は、本問のように、直線運動する物体の発する音をその直線上以外の所から観測する、というタイプと、円運動する物体の発する音を外から観測する、というタイプの
2種類あります。音源が直線運動する問題が出たので、来年は、音源が円運動する問題が要注意です。このタイプの問題では、円運動する物体の速さをvとして、観測者に向かう方向の速度成分 (は、物体の速度と観測者に向かう方向とのなす角)が時間変化することに注意します。物理の他分野でも、こういう感じで、入試問題の予測をして頂きたいと思います。
さて、日本人のアマチュア天文家により
2005年に発見された超新星が、実は連星の片方が恒星の寿命を迎えて超新星爆発をしたものであった、というニュースが最近伝えられました。連星というのは、2個の星がペアになって相互に影響し合いながら円運動している天体です。どうして、超新星爆発を起こした星が連星の片方だったとわかったのでしょうか?詳しい研究内容はわかりませんが、円運動する恒星の速度変化によるドップラー効果が検出されたのではないでしょうか?上記のが時間変化し、ドップラー効果による振動数のずれが時間変化すると、うなりの振動数も時間変化を起こし、連星から地球に到達する光の強度が時間変化するようになります。来年度の入試では、こうしたストーリーの問題が出題されそうな気がします。今までも、重力レンズ、宇宙ヨット、彗星の木星への衝突、小惑星の地球への衝突など、ニュースで伝えられる天体現象は、入試のテーマとして採り上げられてきました。
円運動する物体が起こすドップラー効果の問題を練習しておいて欲しい、ということもそうなのですが、科学関係のニュースにも充分目を光らせておいて頂きたいのです。科学関係のことがらが何かニュースに出る、ということは、そのニュースに関連した内容を研究テーマとしている研究者がいるということです。こちらをご覧の皆さんには、その研究者が入試問題を作るのであれば、どういう問題を作るか、ということを、ぜひお考え頂きたいと思います。ニュースなんて理系の受験生には関係ない、と、思ってしまう受験生は、残念ながら難関大学向きとは言えません。


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