東京大学2013年前期物理入試問題
[1] 次のT,Uの各問に答えよ。
T 図1−1のように、なめらかな水平面上で、ばね定数がkのばね2本を向かい合わせに、それぞれ左側および右側の壁に一端を固定し、他方の端に同じ質量mの小球1および小球2をそれぞれ取り付けた。ばねが自然長のとき、小球間の距離はdであった。ただし、小球の大きさとばねの質量は無視してよい。今、図1−2のように、小球1を、ばねが自然長になる位置から、ばねが縮む方向に距離sだけ動かし(
)、そこで静かに放した。以下の設問に答えよ。 (1) 小球1は動き始め小球2に衝突した。衝突直前の小球1の速さを求めよ。
(2) 小球どうしの衝突は弾性衝突であるとして、この衝突直後の小球1と小球2の速さをそれぞれ求めよ。
(3) この衝突後、再び衝突するまでに、小球1側のばねおよび小球2側のばねは、それぞれ自然長から最大どれだけ縮むか答えよ。
(4)
の場合に、最初の衝突から再衝突までの時間を求めよ。 U 次に、あらい水平面上に、Tと同じばねと小球を用意した場合を考える。どちらの小球も水平面との間の静止摩擦係数はμ,動摩擦係数は
である。重力加速度の大きさをgとして以下の設問に答えよ。 (1) Tと同じように(図1−2)、小球1を、ばねが自然長になる位置から、ばねが縮む方向に距離sだけ動かし、そこで静かに放した。小球1が動き始めるために、sがみたすべき条件を求めよ。
(2) 小球1が動き始めた後、小球2に衝突するためにsがとるべき最小値を求めよ。 [解答へ]
[2] 電荷をもった粒子の運動を磁場により制御することを考える。重力の効果は無視できるものとして、以下の設問に答えよ。ただし、角度の単位はすべてラジアンとする。また、θ を微小な角度とするとき、
,
,
と近似してよい。
T 図2−1のように、
の領域
にのみ、磁束密度がy座標にゆるやかに依存する磁場がz軸方向(紙面に垂直、手前向きを正)にかけられている。質量m,正の電荷qをもつ粒子Pを、x軸正方向に速さvで領域
に入射する。 (1) 領域
を通過した結果、粒子Pの運動方向が微小な角度だけ曲がり、そのx軸からの角度がθ となった。領域
内を通過する間、粒子のy座標の変化は小さく、粒子に働く磁束密度Bはその間一定としてよいとする。このときのθ を求めよ。以後、角度の向きは図2−1の矢印の向きを正とする。
(3) 図2−2(a)のように配置された電磁石の組の点線で囲まれた範囲(拡大図と座標を図2−2(b)に示す)を考える。鉄芯(しん)を適切な形に制作すると、
の平面内で(2)のような磁場が実現できる。このとき、二つの電磁石に流す電流
,
の向きはどうするべきか。それぞの符号を答えよ。ただし、図中の矢印の向きを正とする。
U 次に、T(2)の領域に加えて、図2−3のように、
を中心とし幅dの範囲に、z軸方向に磁束密度
(kは定数)の磁場がかかっている領域
を考える。ここで、領域
と
を両方通過した後の粒子の運動方向の変化は、それぞれの領域でT(1)のように求めた曲げ角の和として計算できるものとし、またdはf に比べて無視できるほど小さいとしてよいとする。粒子Pと、同じ電荷qをもつ別の粒子Qとが、x軸正方向に速さvをもって
で領域
に別個に入射したところ、粒子Pの運動方向が微小な角度
,粒子Qの運動方向が角度
だけ曲げられて、それぞれ領域
に入射した。(1) 粒子Qの質量を求めよ。
(2) 粒子P,粒子Qが領域
に入る際のy座標は、それぞれ
の何倍となるか。 (3) 粒子P,粒子Qが領域
を通過した後の運動方向のx軸からの角度を、それぞれkと
を用いて表せ。 (4) kの値を調整すると、粒子Pと粒子Qが
でx軸上のの同じ点を通過するようにできる。このときのkの値を求めよ。 [解答へ]
[3] 次のT,U,Vの各問に答えよ。なお、角度の単位はラジアンとする。
T 図3−1のように、超音波発信器を用いて平面波に近い超音波を板Aに入射する(板中の直線は波面を表す)。振動数を変化させながら縦波の超音波を板面に垂直に入射したところ、振動数が
の整数倍になるごとに板が共振した。板Aの厚さを
,板A内を伝わる縦波の超音波の速さを
とする。また、板の両面は自由端とする。(2)
のとき、振動数
と
の両方で共振が起こった。
の最小値を求めよ。
U 固体中では縦波と横波の両方が存在する。縦波と横波は速さが異なり、縦波の方がk倍(
)速い。図3−2のように板Aと、それとは材質の異なる板Bを貼り合わせ、2層構造を持つ板を作製した。板B内を伝わる縦波の速さを
とし、
とする。また、kの値は物質の種類によらないとする。
(1) 縦波の反射角θ が入射角αと等しくなることをホイヘンスの原理に基づいて考える。図3−3中の記号P,Q,R,Sを用いて、 を埋めよ。