東大物理'13年前期[3]

次のT,U,Vの各問に答えよ。なお、角度の単位はラジアンとする。

T 図31のように、超音波発信器を用いて平面波に近い超音波を板Aに入射する(板中の直線は波面を表す)。振動数を変化させながら縦波の超音波を板面に垂直に入射したところ、振動数がの整数倍になるごとに板が共振した。板Aの厚さを,板A内を伝わる縦波の超音波の速さをとする。また、板の両面は自由端とする。
(1) を用いて表せ。
(2) のとき、振動数の両方で共振が起こった。の最小値を求めよ。

U 固体中では縦波と横波の両方が存在する。縦波と横波は速さが異なり、縦波の方がk()速い。図32のように板Aと、それとは材質の異なる板Bを貼り合わせ、2層構造を持つ板を作製した。板B内を伝わる縦波の速さをとし、とする。また、kの値は物質の種類によらないとする。
Aの表面上の点Oから、図32のように板A内を角度α ()で伝わる縦波を入射した。すると、境界面で縦波の反射波、屈折波のみならず、横波の反射波と屈折波も発生した。反射角は、縦波と横波についてそれぞれθ であった。屈折角は、縦波と横波についてそれぞれϕであった。
(1) 縦波の反射角θ が入射角αと等しくなることをホイヘンスの原理に基づいて考える。図33中の記号PQRSを用いて、   を埋めよ。
33において、PQに平行な波面を持つ入射波が速さで進んでいる。波面上の2点がそれぞれPQを通過してから時間T後,Qを通過した側が境界上の点Sに達したとする。このとき、Pから発せられた素元波が時間T後になす半円に対してSから引いた接線RSが反射波の波面となる。△PQSと△SRPにおいて、 ア  イ PSSP (共通)であるから△PQSと△SRPは合同である。また、△PQSを直角とする直角三角形であるから、 ウ 。同様に、△SRPを直角とする直角三角形であるから、 エ 。ゆえに、である。
(2) 横波の反射角について、を求めよ。
(3) 縦波の屈折角ϕ,横波の屈折角について、を求めよ。

V Uで作製した2層構造を持つ板の境界面から深さhの位置に異物Xが存在している。図34のように、Oより超音波を入射してから異物表面での反射波がOに戻ってくるまでの時間をt とする。t の測定値からhを求める方法を考えよう。
(1) まず、入射角αを調整し、板B中を伝わる屈折波が横波だけとなるようにしたい。の満たすべき条件を求めよ。
(2) (1)の条件を満たすある入射角αOから縦波を入射したところ、境界上の点Yで横波が屈折角で板B中に入射しXに到達した。その後、同じ経路をたどって反射波がOに戻ってきた。t khαを用いて表せ。ただしXの大きさは無視せよ。


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解答 Uでは、問題をよく読まないと、横波と縦波で何が違うのかと錯覚しかねません。「板Aの表面上の点Oから、・・・縦波を入射した」とする問題文を見逃さないようにしましょう。縦波を入射したら境界面で横波が発生するわけです。なお、U(1)については、ホイヘンスの原理波の反射を参照してください。

Aの上端、下端が、一方が固定端で他方が自由端である場合、一端閉管の振動と同様に、共振は基本振動数の奇数倍の振動数で起きます。
Aの上端、下端が、ともに自由端、あるいは、ともに固定端である場合、開管、あるいは、弦の振動と同様に、基本振動数の整数倍の振動数で共振します(定常波を参照)
本問では、問題文に、「
振動数の整数倍になるごとに板が共振した」とあるので、後者と考えるべきで、板A基本振動数で共振するとき、板A厚さ半波長に一致します。なお、前者であれば、板A厚さ波長に一致します。

T(1) 基本振動の振動数,速さの超音波の波長です。基本振動が板Aで共振する条件は、板A厚さ半波長に一致することで、
......[]
(2) のとき、超音波の波長,共振が起こる条件はmを自然数として、
 ・・・@
のとき、超音波の波長,共振が起こる条件はnを自然数として、
 ・・・A
@,Aをともに満たす自然数mnの中で最小のものは、,このとき、
......[]

U(1) PQSと△SRPにおいて、 (共通)より、△PQS≡△SRP
PQSは∠PQSを直角とする直角三角形だから、
同様に、△
SRPは∠SRPを直角とする直角三角形だから、

(
) QS () RP () QPS () RSP ......[]
(2) (1)と同様の考察を行うと、入射縦波について、,反射横波について、
辺々割ると、 ∴ ......[答]
(3) (1)と同様の考察を行うと(光の屈折を参照)、板A内の縦波について、 ・・・B
B内の縦波について、 ・・・C
B内の横波について、 ・・・D
C÷Bより、 ∴ ......[答]
D÷Bより、 ∴ ......[答]

V(1) Aから板Bに縦波が侵入しようとするときに縦波が全反射する条件は、縦波の屈折角ϕが存在しないことで、 ∴
A,板Bの境界面に縦波が到来して、板B側に横波が発生する条件は、横波の屈折角が存在することで、 ∴ (,問題文より)
よって、求める条件は、 ......[]
(2) 縦波は板A中の距離速さで進み,境界面で発生した横波は板B中の距離速さで進み、同じ経路をたどって反射波がOに戻ってきます。
縦波が板A中を進む時間は、
横波が板
B中を進む時間は、
求める
時間t は、 ......[]


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