東大物理'20年前期[3]

31に示すように、容器XYにそれぞれ1モルの単原子分子理想気体が入っている。容器Xの上部は滑らかに動くピストンで閉じられており、ピストンの上にはおもりが載せられている。ピストンの質量は無視できる。容器Yの体積は一定である。容器の外は真空であり、容器Xと、容器Yまたは物体Zが接触した場合にのみ熱のやりとりが行われ、外部の真空や床などとの熱のやりとりは常に無視できるものとする。容器の熱容量は無視できる。また、物体Zの温度は常にに保たれているものとする。
はじめ、容器
Xは容器Yと接触しており、ピストンの上には質量 ()のおもりが載せられている。容器X内の気体の圧力はである。容器XY内の気体の温度はともにである。このときの容器X内の気体の状態を状態Aと呼ぶことにする。続いて、図31に示すように、以下の操作@〜Cを順番に行い、容器X内の気体の状態を、ABCDEと変化させた。これらの操作において、気体の状態変化はゆっくりと起こるものとする。気体定数をRとすると、状態ADにおける容器X内の気体の圧力、温度、体積、内部エネルギーは表31のように与えられる。

操作@(AB) 容器Xを、容器Y,物体Zのいずれとも接触しない位置に移動させた。次に、ピストン上のおもりを質量がmになるまで徐々に減らした。

操作A(BC) 容器Xを物体Zに接触させ、容器X内の気体の温度がになるまで放置した。

操作B(CD) 容器Xを、容器Y,物体Zのいずれとも接触しない位置に移動させた。次に、ピストン上のおもりを質量がになるまで徐々に増やした。
この操作後の容器X内の気体の温度をとする。

操作C(DE) 容器Xを容器Yと接触させ、容器XY内の気体の温度が等しくなるまで放置した。このときの温度をとする。

以下の設問に答えよ。

T 操作@〜Bにおいて、容器X内の気体がされた仕事をそれぞれとする。Raを用いて表せ。

U 操作Cによる容器X内の気体の状態変化(DE)について、以下の設問に答えよ。
(1) 操作Cによる容器X内の気体の内部エネルギーの変化を、Rを用いて表せ。

(2) 操作Cにおいて、容器X内の気体がされた仕事を、Rを用いて表せ。

(3) 状態Eにおける容器X内の気体の温度を、を用いて表せ。

        表31

圧力温度体積内部エネルギー
状態A
状態B
状態C
状態D ()



V aの値がある条件を満たすとき、操作@〜Cは、容器X内の気体に対して仕事を行うことで、低温の物体Zから容器Y内の高温の気体に熱を運ぶ操作になっている。操作Cによる容器Y内の気体の内部エネルギーの変化をとして、以下の設問に答えよ。

(1) 操作Cによって容器Y内の気体の内部エネルギーが増加する()とき、操作@〜Cにおける容器X内の気体の圧力pと体積Vの関係を表す図として最も適切なものを、図32のア〜カの中から一つ選んで答えよ。

(2) となるためのaに関する条件を答えよ。

(3) 操作@〜Cの間に容器X内の気体がされた仕事の総和をW,操作Aにおいて容器X内の気体が物体Zから受け取る熱量をとする。を、Wを用いて表せ。

(4) 状態Eからさらに引き続き、操作@〜Cを何度も繰り返すと、容器Y内の気体の温度は、ある温度に漸近する。を、aを用いて表せ。


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解答 状態方程式を立てずとも、各状態の圧力、温度、体積、内部エネルギーが表31に与えられていて、時間不足にならないように配慮されています。

T 容器X内の気体の変化を考えます。操作@では熱のやりとりがないので断熱変化です。操作Aではおもりによる重力に変化がなく圧力が変わらず定圧変化です。操作Bでは熱のやりとりがなく断熱変化です。操作Cは操作Aと同様に定圧変化です。以下、表31のデータを使って求めます。

操作@では断熱変化なので、熱力学第一法則により、気体がされた仕事は気体の内部エネルギーの増加に等しくなります。よって、
......[]
操作Aでは定圧変化なので、気体がされた仕事は、圧力と体積変化の積の符号を変えたもので、
......[]
操作Bでは断熱変化なので、熱力学第一法則により、気体がされた仕事は気体の内部エネルギーの増加に等しく、
......[]

U(1) 操作Cでは、容器X内の1モルの気体の温度がと変化するので、内部エネルギーの変化は、
......[]

(2) 操作Cは定圧変化なので、定圧モル比熱の式より、容器X内の気体が吸収した熱は、
 ・・・(A)
操作Cで容器X内の気体がされた仕事は、熱力学第一法則より、
......[]

(3) (A)の熱は、操作Cで容器Y内の気体が与えた熱に等しくなります。容器Y内の気体は定積変化し、容器Y内の1モルの気体が与えた熱は、温度がと変化するので、定積モル比熱の式より、 (与えた熱なのでマイナスがつく)

......[]

V 操作Cによる容器Y内の1モルの気体の内部エネルギーの変化は、温度がと変化するので、U(3)の結果を用いて、
 ・・・(B)
(1) (B)より、です。
U(3)の結果より、 (なので、容器Y内の気体は、操作Cの間に温度が上昇しです)
そこで、A,Cが定圧変化のイ、ウ、オ、カのいずれかで、このうち、温度が、の関係にある(定圧変化のグラフ上で、左から右へ、状態A,状態E,状態Dの順に並ぶ)ものは、オ ......[]

(2) (1)の結果より、表31のデータを用いて、
......[]

(3) 操作Cの間、容器Y内の気体は定積変化するので、熱力学第一法則より、容器Y内の気体が吸収した熱は、内部エネルギーの増加分に等しく、容器X内の気体が容器Yから吸収した熱はです(符号に注意)
操作@とBは断熱変化なので、操作@〜Cの間に容器X内の気体が吸収した熱は、,内部エネルギーの増加分は、温度がと変化することから、に等しくなります。
よって、熱力学第一法則より、
......[]

(4) 操作@〜Cをn回繰り返した後の容器Y内の気体の温度をとすると、Uの(3)の結果において、として、
容器Y内の気体の温度がに漸近したとき、として、
 ∴  ......[] (物理では2項間漸化式を解く必要はありません)



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